賃貸物件は代理契約で借りられる?入居者・契約者の条件や注意すべきポイントを解説します

代理契約を結ぼうとしている親子と不動産会社スタッフ

賃貸物件を契約したいけれど、何らかの事情で入居者自身が契約できない場合があるかもしれません。賃貸借契約にはさまざまな方法があり、必要な条件を満たせば入居者本人でなくても契約を結ぶことができます。

今回は、入居者以外の人が賃貸物件を契約できる「代理契約」について解説していきますので、賃貸物件を借りたいけど自分自身で契約するのが難しいという方はぜひ参考にしてください。

賃貸物件は代理契約で借りられる!

賃貸借契約を結べなかったとしても、代理契約を行うことで賃貸物件を借りることができます。代理契約の特徴は、入居希望者とは異なる人が賃貸借契約を結ぶという点にあります。収入がない、未成年であるなど、何らかの事情で賃貸借契約を結べない場合、代理契約が有効です。

賃貸物件の代理契約ができる条件

代理契約は誰でも使える方法というものではなく、代理契約を行うためには3つの条件を満たす必要があります。

・代理人の収入は十分か
・代理人の信用情報に問題がないか
・契約者と入居者の関係性

これらのポイントが押さえられていないと代理契約を行えないため、事前に確認しておくようにしましょう。

①代理人の収入は十分か

代理契約は代理人が契約者本人になるので、代理人の収入は重要なポイントです。安定した収入を得られる仕事に就いているかどうかが、契約を結ぶ際にチェックされます。

入居審査で求められる収入の基準は、家賃1ヶ月分の36倍以上の年収といわれています。

たとえば家賃6万円の賃貸物件を選んだ場合、少なくとも216万円以上の年収が必要です。代理人の年収が必要な額に達していないと審査に通りにくく、代理人契約を結ぶのが難しいとされています。

また収入だけでなく、勤続年数や年齢などの項目もチェックされます。

たとえば、勤続年数が短い、高齢の母親を代理人に立てた場合、家賃を払い続けることが困難とみなされてしまうかもしれません。

②代理人の信用情報に問題はないか

信用情報とは、ローンの契約や申し込みに関して客観的な取引事実を登録した情報のことです。
ローン会社などが各種契約を結ぶ前にチェックする情報で、犯罪歴や人種などの項目は含まれません。

信用情報はローン会社やクレジットカード会社、銀行などの信用情報機関の間で共有されます。クレジットカードや携帯電話などの延滞や未払い、自己破産などの経験があると、家賃保証会社の審査に通りにくい可能性があります。

また自分の信用情報は、信用情報を扱う機関に開示請求をすることでチェックできます。

代理人の信用情報に不安を覚える人はあらかじめ確認してもらうのもおすすめです。信用情報は5〜10年で削除されるので、信用情報に傷がついている場合はいつの履歴なのかも確認しましょう。

③契約者と入居者の関係性は近いか

収入や信用情報などさまざまな条件がある代理人契約ですが、誰でも代理人になれるわけではありません。代理人として認められるのは、自身の3親等より近しい関係の人と決められています。

3親等以内の親族は、主に以下のような方々です。

・父母
・配偶者
・子ども
・兄弟
・祖父母
・曾祖父母
・孫
・伯叔父母
・甥姪

また、それぞれの配偶者も3親等以内の親族に含まれます。

上記よりも遠い親族の他、友人や知人などを代理人とした場合、入居審査に落ちる可能性が高いです。両親や兄弟など、できる限り近い親族を代理人に立てた方が入居審査に通りやすいといわれています。

賃貸物件の代理契約を行う場合の流れ

ここでは賃貸物件を代理契約で借りる際の流れをご紹介します。それぞれの詳しい内容をチェックして、トラブルのないよう各種手続きを進めていきましょう。

①部屋探し

代理契約を行う場合も、まずは部屋探しからスタートです。

ポータルサイトや不動産会社を活用しながら、希望の条件に合う賃貸物件を見つけましょう。希望する条件に優先順位をつけておくと部屋探しがスムーズに進みます。

入居者や代理人が賃貸物件から遠い場所にいて、現地での内見ができない場合、オンライン上で内見を行う「オンライン内見」がおすすめです。

オンライン内見は、ビデオ通話などのツールを使って自宅にいながら行う内見のことです。不動産会社の担当者は現地にいるため、わからないところや詳しく知りたい部分があれば、その場で聞くことができます。

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②申し込み

希望する賃貸物件が決まったら、賃貸借契約の申し込みを行いましょう。

代理契約の申し込みには、入居者と代理契約者の両者が揃って来店できるのが望ましいです。予定が合わない場合は、事前に不動産会社に相談して疑問点をなくしたり、郵送での対応が出来ないか確認しておきましょう。

また、代理契約には代理契約者の他に身内の緊急連絡先が必要です。入居者にとっては2人の親族に依頼する必要があるため、前もって確認しておきましょう。

一般的に入居の申し込みには以下のような持ち物が必要です。

・契約書
・入居者の個人情報
・代理人の個人情報
・印鑑
・印鑑証明
・住民票
・身分証明書
・代理人の収入を証明するもの
・家賃の支払いに使う口座の通帳
・初期費用

また、賃貸物件の申し込みについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、代理契約を行う予定の人は併せてチェックしてみてください。

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賃貸物件の契約で必要になるものリスト!会社員、学生、フリーランスなど状況別に解説

③重要事項説明

重要事項説明とは、入居予定者に対して契約に関する重要な事項を説明することです。

不動産の取引は複雑なため、担当者のわかりやすい説明がなければ内容を十分に把握できません。不動産取引において重要事項説明は欠かせないもので、もし行われない場合は義務違反となります。

重要事項説明は口頭で説明しなければいけないルールがありますが、契約者である代理人が現地に行けない場合、不動産会社によってはIT重説が受けられる可能性もあります。

IT重説は、重要事項説明をオンライン上で行うサービスのことで、説明を聞くために不動産会社へ出向かなくても、オンライン上で契約に必要な手続きを進めることが可能です。

④書類の提出

重要事項説明の後には入居審査が行われます。入居審査に通れば不動産会社から契約書が届くので、代理人に署名・捺印をしてもらい、以下の書類と一緒に返送しましょう。

・代理人の住民票
・代理人の印鑑証明書
・代理人の源泉徴収票
・代理人の通帳のコピー

契約書に署名・捺印すると賃貸借契約が始まります。もしキャンセルするとなった場合、違約金を支払う必要があるため注意が必要です。

代理契約の場合、連帯保証人が必要なケースは少ないです。しかし、連帯保証人が必要な賃貸物件の場合は、この際に連帯保証の印鑑証明書も提出しなければいけません。

なかには住民票などが必要な不動産会社もあるため、事前に担当者に確認しておきましょう。

⑤初期費用の入金

契約が完了すれば、代理人名義で初期費用を入金します。初期費用の支払い期日は決められており、支払いが遅れると今後の信用問題に発展するため必ず期日までに支払いましょう。

賃貸物件の初期費用の相場は、家賃の5〜7ヶ月分といわれています。敷金や礼金、仲介手数料などが不要な賃貸物件を選ぶことで初期費用を抑えられるため、部屋探しの際に代理人と相談しておくのもおすすめです。

また、初期費用を入居者名義で支払いたい場合は、事前に不動産会社に伝えておくことで対応してもらえる可能性があります。

また、初期費用の内訳についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、興味をお持ちの方は一度チェックしてみてください。

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⑥鍵の受け渡し

鍵の受け渡しは、入居者・代理人のどちらでも構いません。不動産会社によっては鍵の受け取りに印鑑が必要な場合もあるため、事前に確認して忘れないよう持参しましょう。

鍵を受け取ったら、自身の好きなタイミングで入居できます。

また、事前に水道・ガス・電気などのライフラインの手続きをしておくことで、鍵を受け取った当日から住むことも可能です。ライフラインの手続きも代理人名義で契約できるため、代理人とどちらの名義で契約するのか事前に相談しておきましょう。

賃貸物件の代理契約での3つの注意点

賃貸物件の代理契約には、通常の契約とは異なる注意点があります。トラブルに悩まされないためにも、入居者・代理人ともに以下のポイントを事前に確認しておきましょう。

滞納すると契約者(代理人)の責任になる

代理契約で家賃を滞納した場合契約者である代理人の責任となり、催促の連絡が届きます。

家賃滞納から約3ヶ月経つと、大家さん側から契約解除や法的措置を行える権利が発生します。代理契約の場合、財産が差し押さえられ、信用情報に傷がつくのは契約者である代理人です。

強制退去は入居者にとっても大きな問題なので、家賃は決められた期日までに支払いましょう。物件の契約を申し込む前に、どちらが月々の家賃を支払うのかをしっかりと決めておくことが重要です。

更新や退去でも契約者の協力が必要

賃貸借契約の更新や退去においても、代理人が対応しなければいけません。万が一入居者と代理人の間にトラブルが起こった場合、賃貸借契約の更新などができない可能性があります。

入居中に契約者の名義変更をしたい場合は、入居者名義で再度審査をすることで対応できます。しかし名義変更手数料がかかるため、緊急時以外はあまりおすすめできません。

家賃の引き落とし口座についても注意

代理契約の場合、家賃の引き落とし口座名義は契約者である代理人でないといけません。入居者名義の口座で引き落としが行われても、入金の確認ができないからです。

そのため家賃の支払いが入居者の場合、毎月の家賃額を代理人に支払う必要があります。代理人と入居者の間で信頼関係ができていないと、家賃に関するトラブルが発生するかもしれません。

また、家賃の支払い方法は多岐にわたり、コンビニ払いや直接手渡しの方法を使うと入居者本人が支払えます。

ただし、大家さんや不動産会社によっては対応していない場合もあるので、家賃の支払い方法についてあらかじめ確認しておきましょう。

賃貸物件の代理契約が必要な人

代理契約は、以下のような人におすすめの方法です。

・収入が少ない、未成年の学生
・無職やフリーターなど収入が不安定の人
・信用情報に問題がある人

上記3つの特徴に当てはまる人は入居審査に通りにくいとされているため、何度も審査に落ちてしまう場合は代理契約をすることも検討してみてください。

【補足】委任状があれば代理での手続きも可能

今回ご紹介した代理契約は、契約者と入居者が異なる場合での契約方法です。一方、契約者と入居者が同じである場合も、必要な手続きを代理人が行うこともできます。

手続きだけを代理人が行う場合、入居者の委任状が必要です。しかし、この方法を断っている大家さんも多いので、手続きができるかどうか事前に不動産会社に問合せておきましょう。

入居者本人が賃貸契約できない場合は代理契約がおすすめ

代理契約には、収入と信用情報が確立している3親等以内の親族が求められます。

通常の賃貸借契約よりも用意しなければならない書類が多いため、何が必要かを事前に不動産会社の担当者に確認しておくようにしましょう。

また代理契約の場合、賃貸物件で何らかのトラブルが起きて誰かに迷惑をかけてしまったらそれは代理人の責任です。代理人に迷惑をかけないよう、入居者も節度ある行動を心がけることが大切です。

ふどサーチ編集部