家賃の値上げを拒否したい!確認ポイントや決裂した場合についても解説!

RENT(賃貸)の文字

家賃の値上げについて通知があった際、「値上げを拒否したい」「交渉はできないの?」と考える方も多いのではないでしょうか。

値上げ拒否の交渉をすべきかどうか適切に判断できれば、トラブルなくスムーズに話を進めていけるかもしれません。

今回は、家賃の値上げについて悩んでいる人に向け、値上げを拒否できるかどうかについて解説します。また、値上がりの理由や交渉時のポイントなども紹介していくので、不安な人は参考にしてみてください。

【結論】家賃の値上げは拒否できる

もし家賃の値上げを提示されたとしても、一般的に家賃の値上げは拒否できます。大家さんと入居者、双方合意のうえで契約が成立するため、必ずしも値上げに応じる必要はありません。

ただし、あくまでも拒否や交渉ができるという意味であり、通知を無視し続けるのは避けましょう。まずは「なぜ値上げするのかを理解すること」が大切です。

また、家賃の値上げは法律(借地借家法)に基づいて行われ、大家さん自身の利益をアップさせるために行われるものではありません。この点も理解したうえで、次項から値上げの理由について見ていきましょう。

家賃が値上がりする理由

家賃が値上がりする理由は主に3つあります。これらの理由を知って、交渉すべきか判断しましょう。

家賃値上げの理由①:日本の物価が上がった

日本の物価上昇は、家賃値上がりの原因のひとつです。

物価が上がるということは、大家さんの家賃収入が実質的に減少します。物価の変動具合にもよりますが、従来の家賃では賃貸経営が赤字になる場合、大家さんは家賃を値上げせざるを得ません。

家賃値上げの理由②:固定資産税が上がった

固定資産税が上がると、大家さんは家賃を値上げして赤字が出ないようにします。

固定資産税とは、不動産を所有している人に課される税金です。3年に一度のペースで税額の見直しが行われ、そのときの建物・土地の価値に応じて税額は変動します。

税額の見直しによって固定資産税が上がっているのに家賃をそのままにした場合、大家さんは赤字を抱えるおそれがあります。固定資産税が上がっても家賃収入を従来通りに維持するため、家賃をアップさせるという仕組みです。

家賃値上げの理由③:周辺の家賃相場と額が見合わない場合

周辺の家賃相場と額が見合わない場合、大家さんは家賃の値上げを行います。

家賃には地域ごとの相場があり、相場よりも低く設定してしまうと大家さんは損をしてしまいます。このようなケースにおいても、値上げは法律上問題ありません。

一方、相場よりも家賃が高い場合、入居者側から家賃の値下げ交渉を行うこともできます。この場合は、家賃相場の根拠となるデータを示し、具体的にいくらまで下げてほしいのかを伝えましょう。

家賃が値上がりするタイミング

家賃が値上がりしやすいタイミングは、賃貸契約の更新時です。賃貸契約には期間が定められており、満期に達する際は更新するかどうかの通知が自宅に届きます。

更新の時期が近づくと、家賃の値上げに関する連絡が入ることもめずらしくありません。入居者はこのタイミングで初めて、具体的にいくら値上げされるのか把握します。

ただし、必ずしも更新時期に値上げを通知されるとは限りません。値上げの通知時期は法律で定められているわけではなく、通知のタイミングは大家さん次第です。

家賃値上げを拒否する際に確認すべきこと

値上げを拒否する際は、ここから解説する4つのポイントを押さえて、交渉の成功率をアップさせましょう。

まずは値上げの理由を確認して、正当性があるか判断しましょう。理由を教えてもらう際は、根拠となる客観的なデータを提示してもらう必要があります。データがあれば、値上げに正当性があるかチェックすることが可能です。

具体的にどのようなデータを提示してもらうのか、理由別に見ていきましょう。

<必要なデータの例>

・物価上昇が原因の場合:物価上昇による変化がわかる資料
・固定資産税が原因の場合:過去から現在にかけて、固定資産税の変化がわかる資料
・家賃相場が原因の場合:住んでいるエリア一帯の家賃相場と、自分が支払っている家賃が比較できる資料

上記のようなデータから、値上げに正当性があるか、提示された額が適切かを判断しなければなりません。

周辺の家賃相場を確認する

値上げの理由に納得できるか、周辺の家賃相場を確認しましょう。このとき、大家さん側から提示される資料+自分で調べた結果を比較することが大切です。

家賃相場を確認する際は、住んでいる賃貸物件と似た間取りや条件をもつ物件と比較する必要があります。たとえば、2LDKと1Kでは間取りが異なり、家賃相場もそれぞれ違うからです。

類似物件を調べる際は、以下のポイントに注意して家賃相場を確認してみてください。

<類似物件を調べるときのポイント>

・間取り
・築年数
・駅からの距離
・階数
・設備
・建物の構造(木造や鉄筋コンクリートなど)

上記のポイントに注意して、類似物件の家賃相場と住んでいる賃貸物件の家賃を比較してみましょう。家賃相場と、値上げ前の家賃がさほど変わらない額であれば、交渉を優位に進めやすくなります。

選択肢を広げたうえで提案する

選択肢を広げて提案することで、交渉の落としどころを探りやすくなります。闇雲に「値上げはやめてほしい」と訴えかけたとしても、大家さんは理由があって値上げしているため、交渉が失敗に終わるかもしれません。大家さんの事情も察したうえで選択肢をいくつか提示し、交渉をスムーズに進めましょう。

たとえば、以下のような選択肢が挙げられます。

<交渉の選択肢>

・値上げ率を下げてほしいと提案する
・値上げの開始時期を先に延ばしてもらう
・値上げを了承する代わりに契約更新料を免除してもらう

選択肢を提示する際は、その理由も解説しましょう。「値上げされると支払いがむずかしくなる」「他の固定費を下げられるまで期間を延ばしてほしい」などの理由を添えておくと、交渉をより進めやすくなります。

落ち着いて話すことを心がける

交渉の際は落ち着いて話すことを心がけ、トラブルへ発展しないようにしましょう。

感情的になると交渉がスムーズに進まないおそれがあるほか、こちらの提案を承諾してもらえないことも考えられます。また、今後も住んでいく意思があるのであれば、大家さんとの関係性が悪化してしまう事態も避けたいです。

値上げと聞き、焦ってしまう方も多いかもしれませんが、こちらの話を聞いてもらえるよういつもよりも冷静な態度で働きかけることが大切です。

事前に「何を話すのか」「最終的な落としどころはどこか」などを決めておき、交渉当日に不安になってしまわないよう、事前に準備しておきましょう。

家賃値上げに関する交渉が決裂した場合の対応

最後に、値上げ拒否の交渉が失敗した場合の対応方法を2パターン解説します。交渉は必ずしもうまくいくとは限らないので、次項からの対応方法を理解しておいてください。

値上げ前の家賃を支払い続ける

交渉が決裂した場合でも、値上げ前の家賃を支払い続けていれば無理に退去させられるようなことはありません。「退去してほしい」という旨の通知を受けたとしても、法律上は退去の義務がないためです。

借地借家法第32条によると、協議が決裂した場合、増額の正当性が裁判で確定されるまでの間は、増額前の家賃を支払って問題ないという旨が記載されています。ただし、家賃値上げの正当性が認められれば不足分に利息を追加して支払わなければなりません。

また、値上げに納得できないからといって、値上げ前の家賃も支払わないというのは避けましょう。この場合は家賃滞納となり、賃貸契約の解除に繋がるおそれがあります。

家賃を受け取ってもらえない場合は「供託制度」を活用する

交渉決裂によって家賃を受け取ってもらえない場合は「供託制度」を活用しましょう。

供託制度とは、大家さんに支払うはずの家賃を、国家機関の供託所(法務局や地方法務局など)へ預けられる制度です。最終的には大家さんが家賃を受け取ることになるため、法律上の目的(家賃を滞納なく支払う)は達成されます。

このように、供託制度を利用することで、家賃滞納による強制退去を避けることが可能です。供託制度を活用せず家賃を受けとってもらえていない場合は、前述したように家賃滞納の扱いとなって契約解除・立ち退きを求められるおそれがあるので注意してください。

また、一度決裂してしまった大家さんとの交渉を少しでも穏便に済ませたいという人は、自治体の消費生活相談窓口や弁護士などへ相談してみましょう。親身になって話を聞いてもらえるほか、家賃交渉に関するさまざまなアドバイスをもらえます。

また一度交渉が失敗しても、再度話し合いの場を設けて、家賃を受け取ってもらえる方向に交渉を進められる可能性もあるので、困ったときは一度連絡を入れてみることをおすすめします。

参考:法務省「供託手続」

冷静に対応すれば家賃の値上げを拒否できる

家賃の値上げは拒否できますが、大家さんの言い分にも耳を傾ける姿勢を忘れないでください。以下のような理由によって、やむを得ず値上げの提案をしている可能性があります。

<家賃値上げの理由>

・物価の上昇
・固定資産税の増加
・周辺の家賃相場と額が見合わない

大家さんにとって家賃は大切な収入源なので、一方的に値上げを拒否するのは控えましょう。交渉時は次のポイントを押さえて、適切な方法で交渉する必要があります。

<値上げを拒否する際のポイント>

・値上げの理由を確認する
・周辺の家賃相場を確認する
・選択肢をいくつか設けて提案する
・冷静な態度で落ち着いて話す

また、交渉決裂の際は、値上げ前の家賃だけでも支払っておきましょう。支払わない場合は契約解除を言い渡されるおそれがあり、場合によっては住む場所を失ってしまうかもしれません。

値上げ前の家賃では受け取ってもらえないという場合でも「供託制度」を利用し、家賃の支払いを続けることができます。

家賃の値上げを通知された際は、大家さんの事情も配慮しつつ、最低限のマナーを守って対応しましょう。

ふどサーチ編集部