寒い冬に欠かせないのがエアコンやストーブなどの暖房器具ですが、足元が寒ければ部屋を暖めても快適とはいえません。
そこでおすすめなのが床暖房です。冷えた床が暖まるため、「部屋を暖めても足元が寒い」といった悩みもなくなります。
今回は、床暖房付き賃貸物件のメリットや注意点をご紹介します。
また、床暖房の種類や効率的な使用方法についても解説していきますので、床暖房が気になる人は参考にしてみてください。
そもそも床暖房とは?
床暖房は、床を温めることで足元から部屋全体を暖める暖房設備のことです。
足元に直接伝わる伝導熱と、ふく射熱を利用して部屋を暖める仕組みとなっており、冬場によく使うという方も多いのではないでしょうか。
ふく射とは、床暖房の熱が壁や天井に反射し、その熱が室内全体に広がる現象のことを指します。ファンヒーターなどのような高温の空気の流れ、つまり対流熱によって暖める暖房機器とは暖め方が異なります。
なお、床暖房には温水式(循環式)と電気式(ヒーター式)の2種類があり、導入時にはどちらか選ばなければなりません。
温水式(循環式)の仕組み
温水式とは、暖房用の温水を床下で循環させて暖める方式です。温水式床暖房の熱源は主に4種類あります。
■ガス(都市ガスやプロパンガス)
■電気を用いたヒートポンプ
■電気とガスのハイブリッド
■灯油
一般的にはガスや電気を使用した床暖房が多いですが、省エネタイプのハイブリッド方式も増えています。電気式よりもコストが抑えられ、部屋全体を均一に暖められるのが特徴です。
電気式(ヒーター式)の仕組み
電気式とは、床下に敷いたヒーター内蔵のパネルに電気を通し、床を温める方式です。
温水式よりも立ち上がりが早く、部屋がすぐに暖まりやすい特徴があります。設置にかかる初期費用は安いですが、ランニングコストがかかる点には注意が必要です。
電気式には、ヒーター内蔵のパネル以外にも、蓄熱式とPTCヒーターがあります。
蓄熱式は、電気の利用料金が低めに設定されている夜間電力を使って蓄熱材を暖めておき、日中に放熱させて使う床暖房のタイプです。メンテナンスがほぼ必要なく、電気代も抑えやすいという特徴があります。
PTCヒーターは、自ら室温を感知して調節する床暖房のタイプです。
たとえば、日光が当たって温度が高い部分では暖房の程度を抑え、その後も一定の温度となるようコントロールされます。快適な室温が保たれる他、無駄な電気も使いません。
床暖房付き賃貸物件の6つのメリット
床暖房がついた賃貸物件に住むと、以下の6つのメリットが得られます。
1.足元を温められる
2.空気の乾燥を防げる
3.暖房器具でスペースを取ることがない
4.お手入れの必要がない
5.耐用年数が長い
6.安全性が高い
1つずつ見ていきましょう。
①足元を温められる
床暖房のメリットは、足元が温められ頭寒足熱となることです。
暖かい空気は上に溜まるため、エアコンなどの暖房器具を使ってもを足元は寒いのに、頭はぼーっとしてしまうことがあります。
床暖房があれば足元から部屋全体が暖まり、全身で暖かさを感じられます。冷え性で悩む人であれば、足元を温められる床暖房を利用することで快適になります。
②空気の乾燥を防げる
ストーブやエアコンなどの暖房器具を使うと部屋全体が乾燥します。特に冬は空気が乾燥しやすく、加湿機を併用するなどの対策をしないと体調管理が難しくなります。
床暖房は、エアコンのような気流が発生しないため、部屋の空気が乾燥しにくい点がメリットです。喉の痛みやドライアイなどの症状に悩んでいる人は、床暖房付きの賃貸物件にすると冬でも快適に過ごせます。
③暖房器具でスペースを取ることがない
床暖房は、床下に設置された温水や電気によって部屋を暖めるものです。
そのため、ストーブやファンヒーターなどの暖房器具を部屋に置く必要がありません。もちろんコードもないため、すっきりとした印象の部屋に仕上がります。
④お手入れの必要がない
床暖房は、ストーブやエアコンのようにお手入れをする必要がありません。
他の暖房器具の多くは、例えば石油ストーブは灯油の抜き取り、エアコンはフィルター掃除など、使用中や季節の終わりにしまう際の手入れが欠かせません。
しかし、床暖房は特別なお手入れが不要で、通常の床掃除だけで済みます。一人暮らしの方はもちろん、仕事や家事に忙しい方にもおすすめの設備といえます。
⑤耐用年数が長い
床暖房の温水パイプの耐用年数は30年ほどで、一般的な住まいと同程度の耐久性があるとされています。温水を作る熱源機の耐用年数は10〜15年ほどですが、温水パイプの耐用年数が長いため、頻繁に取り替える必要はありません。
⑥安全性が高い
ストーブやファンヒーターはやけどや火災の心配があるため、特に小さな子どもやお年寄りのいる家庭では扱いに注意が必要です。一方、床暖房は他の暖房器具に比べ火災ややけどの危険性が低く、安心して利用できます。
床暖房付き賃貸物件の4つの注意点
空気の乾燥を防ぎ、部屋を足元から暖めるなどメリットが多い床暖房。一方で、以下の点に注意が必要です。
1.低温やけどのリスクがある
2.光熱費が高くなりやすい
3.床暖房付きの賃貸物件が少なく、家賃が高い傾向がある
床暖房付き賃貸物件を検討している方は、メリットだけでなく、注意点も知っておきましょう。
①低温やけどのリスクがある
床暖房は他の暖房器具に比べやけどの危険性が低いとお伝えしましたが、低温やけどには注意が必要です。低温やけどとは、40〜50℃ほどの低めの温度に長時間触れることによって生じるやけどのことです。
床暖房はぽかぽかとして心地良いため、横になったまま寝落ちしてしまったり、子どもを直接床の上で寝かせたりしてしまうおそれがあります。
低温やけどは自分では気づきにくく、場合によっては重症化することもあるので、長時間直接肌に触れないよう注意しましょう。
②光熱費が高くなりやすい
床暖房は光熱費が高い傾向にあります。床暖房の光熱費は、他の暖房器具と比べてどれくらい違うのでしょうか。以下の表で、1時間当たりの光熱費をチェックしてみましょう。
暖房器具 | 1時間当たりの光熱費 |
---|---|
床暖房(ガス) | 約51円 |
エアコン | 約13.5円(8畳の場合) |
ホットカーペット (かんたん床暖 DC-2V4/Panasonic) | 高:約16.2円/中:約12.2円 |
ファンヒーター (加湿機能付きセラミックファンヒーター DS-FKX1205/Panasonic) | 強:約33.8円/弱:約18.1円(50Hz時) |
暖房器具の機種や条件などによって異なりますが、 床暖房の1時間当たりの光熱費は、他の暖房器具と比べて高めです。特に電気式の床暖房は、毎月のランニングコストに悩まされる傾向にあります。
③床暖房付きの賃貸物件が少なく、家賃が高い傾向がある
床暖房がついている賃貸物件の数はそれほど多くなく、希望するエリア・予算では見つかりにくい場合があります。渋谷区のワンルーム〜1LDKの物件を例に、床暖房付き物件の数を見てみましょう。
検索条件 | 物件数 | 9.5万円以下の物件数 |
---|---|---|
条件指定なし | 2650件 | 1125件 |
床暖房付き | 66件 | 0件 |
※CHINTAIネット2022年5月2日時点
渋谷区のワンルーム〜1LDKの物件の中で床暖房付きの物件は、条件指定なしと比べると大きく減ります。さらに、渋谷区のワンルーム〜1LDK家賃相場である9.5万円以下の物件に絞ると、床暖房付きの物件は0件という結果になりました。
また、調査時に見つかった床暖房付き物件で最も家賃が安い物件は9.8万円、最も高い物件は41.5万円でした。床暖房付き物件を希望する場合、相場より高い家賃を支払う覚悟が必要です。
渋谷区に限らず、都内や地方でも床暖房付きの物件数は少ないため、理想の物件を見つけるのに苦労する可能性があります。
床暖房を効率的に使う方法
床暖房は、以下のポイントを押さえるとより効率的に使うことができます。
1.他の暖房器具と併用する
2.床暖房の上にカーペットを敷かない
3.部屋の断熱効果を高める
4.電源を早めに切る
それぞれの方法について、詳しく説明していきましょう。
他の暖房器具と併用する
床暖房は、部屋全体が暖まるまでに約1時間かかります。そのため、起床後や帰宅後すぐに部屋を暖めたい場合は、エアコンやファンヒーターなどの暖房器具と併用して使うのがおすすめです。
部屋が暖まった後は他の暖房器具の温度を調整し、無駄な電気代を抑えましょう。
床暖房の上にカーペットを敷かない
最初にお伝えしたように、床暖房はふく射熱と足元から直接伝わる熱(熱伝導)によって部屋を暖めます。床暖房の上にカーペットを敷くとこの伝導熱の効果が減ってしまうため、何も敷かない方がより効率的に暖をとることができます。
部屋の断熱効果を高める
床暖房に限りませんが、部屋の断熱効果を高めると、部屋が暖まりやすく光熱費の節約にも繋がります。断熱カーテンを活用したり、窓に断熱シートや気泡緩衝材を貼ったりして部屋の断熱性を高めましょう。
電源を早めに切る
床暖房は、電源を切った後も20〜30分は暖かさが続きます。外出時など床暖房を使わない場合は、早めに電源を切って光熱費を抑えましょう。
床暖房付き賃貸物件はメリットが多い!
床暖房は足元から部屋全体を暖め、安全性も高い暖房設備です。
光熱費が高く備わっている物件が少ないのは注意点ですが、冷え性やエアコンの乾燥に悩む人や、子どもや高齢者のいるご家庭にとっては多くのメリットがあります。
部屋探しをする際には、床暖房付きの物件を条件のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。