物件を借りたり売却したりする際、不動産会社を介して物件探しや契約をするのが一般的です。大家さんなどとの直接取引も法律上可能ではありますが、手続きをすべて自分でする必要があり、手間がかかったりトラブルにつながる可能性も考えられるためです。
しかし、過去に不動産仲介会社の対応で嫌な思いをした、不動産会社のネガティブなニュースを見たなどの経験があると、仲介を任せることに不安を覚えるかもしれません。
今回は悪徳不動産会社の手口と対処法、見分け方などを紹介していきますので、やばい不動産会社に仲介依頼しないための参考にしてみてください。
目次
やばい悪徳不動産会社に仲介を依頼してしまうとどうなる?
まれに、悪徳な不動産会社があるとは知っていても、実際にどのような手口が使われるのかは知らないという方も多いのではないでしょうか。悪徳不動産会社に仲介を依頼してしまうと、以下のようなリスクが考えられます。
手口 | リスク |
---|---|
干す | あえて販売活動をおこなわない(干す)ことで、需要がない物件だと売主に思わせる。 →売主・貸主:不動産会社に物件の主導権を握られる →買主・借主:優良な物件が市場にでず買ったり借りたりができない |
値こなし | 干したあと、「この価格では物件が売れない」と値下げをするように売主を説得する。 →売主・貸主:適正な価格で物件を売れなくなる →買主・借主:適正な価格で物件を買えなく(借りられなく)なる |
囲い込み | 他社の問合せに対し「買い手がついている」と嘘をつき、仲介手数料を取るために自社で買い手がつくまで物件を囲い込む。 →売主・貸主:物件が売れるまでに時間がかかり、価値が下落してしまう可能性がある →買主・借主:優良な物件でも買ったり借りたりができない |
悪徳不動産会社がこのような手口を使うのは、「両手取引」をするためです。両手取引というのは、1つの不動産会社が戸建てやマンションの売主と買主の両者を仲介することで、これによって両方から仲介手数料が入ります。悪徳な仲介業者はこの「両手取引」ができるよう、「干し」「値こなし」「囲い込み」などの手口を使ってくるのです。
こういった手口を使われると、売主は物件が売れるまでに時間がかかる、相場より安い値で販売されるなどのリスクを被るので注意しましょう。また買主・借主にも、優良な物件があるにも関わらず市場に出されていないため見つけられない、優良物件を買ったり借りたりができないというデメリットがあります。
やばい悪徳不動産会社8つの手口と対処法
前項でも悪徳不動産会社の手口を紹介しましたが、ほかにもあらゆる手口を使って借主や売主の利益を搾取したり、不利益を与えたりする会社があります。悪徳不動産会社の手口を知っておけば、実際にそのような場面に遭遇しても対処できます。
もちろん、悪徳な不動産会社は仲介業者のごく一部ですが、その「ごく一部」に当たってしまう可能性もあるので、事前に手口と対処法を覚えておきましょう。
①:おとり広告
「おとり広告」は、実際には取引をする意思のない優良物件をおとりにして、客を呼び寄せる手口です。たとえば、新築や築浅で間取りも広く、利便性がよいなど好条件の物件なのに通常の家賃相場よりも安い物件を見つけたとします。そこで不動産会社に問合せをしたところ「来店してください」といわれ、行ってみたら「すでに入居が決まってしまったのでほかの物件を紹介します」というのがおもな手口です。
好条件の物件なのに家賃が相場よりも著しく安いなど、「おとり広告」かどうかあやしい場合、来店はせず現地で待ち合わせをして内見できるか聞いてみてください。とくに問題がない物件であれば内見できるので、現地集合で問題ありません。しかし、「所有者が禁止している」などの理由で頑なに内見を拒否された場合はおとり物件の可能性が高いです。
おとり広告に引っかからないための対処法としては、相場より著しく安い物件ではないか確認したり、複数のポータルサイトで募集のある物件かどうかチェックしたりするなどの見極め方があります。
しかし、おとり広告と気づかず不動産会社まで行ってしまうこともあるかもしれません。そういった場合の対処法は、個人情報などをいっさい教えずにお店を出ることです。より悪質な業者になると、「キャンセルが出るかもしれないので連絡先を教えてください」といわれることもありえます。たしかに、キャンセルが出ないとは限りませんが、おとり広告の物件は取引する意思のない物件のほかに、そもそも実在しない物件の場合もあります。少しでもあやしいと感じた際は、個人情報を教えるようなことは控えましょう。
②:申し込み・契約を迫る
申し込みや契約を迫ってくるというのも悪徳業者がよくおこなう手口です。賃貸であれ、物件購入であれ、物件の取引では大きなお金が動くことになります。優良な不動産会社であれば、お客様の意思をいっさい尊重せず申し込みや契約を急かすようなことはありません。内見予約が多い繁忙期や人気な物件の場合、提言として「早めに決めないと入居者が決まってしまうかもしれない」といった旨を伝えることはありますが、お客様の気持ちや事情を考えず大事な決断を急かすのは、悪徳な不動産会社がやることです。
「内見して気にいったから即決した」といったケースであれば問題ありませんが、業者に急かされて契約書にサインするようなことはしないでくださいね。
③:違法建築物件を紹介する
建築から賃貸までおこなっている不動産会社の場合、悪徳な手口として、違法建築の物件を紹介することがあります。自社で建築をおこなっていれば、たとえば耐震基準をごまかすことができ、そのぶん建築費用を安く抑えられます。家賃や売価を下げずに紹介することで、不動産会社はより多くの利益を得ることができるのです。
違法建築物件の可能性があれば、物件の検査済証が発行されているかを確認してみてください。検査済証は、物件が建築基準法の基準に適合していることを証明する書類なので、検査済証が発行されていれば安心してよい物件といえるでしょう。
④:契約不成立の場合でも、申込金や預かり金を全額返金しない
契約が不成立になっても、申込金や預かり金を全額返金しないというのも悪徳不動産会社の手口です。申込金や預かり金は契約前に払うものなので、契約にいたらなかった場合、不動産会社は基本的に全額返金しなければなりません。これは宅建業法にも明記されていることなので、返金しない場合は「宅建業法で決まっているのを知っている」と伝えてみてください。
ただし、悪徳不動産会社でなくても、キャンセルのタイミングによっては払ったお金が全額返金されない場合もあるため注意してください。たとえば、売買代金の一部を売主に払う「手付金」は、違約金としての目的があるため返金されないことがあります。また契約前であっても、宅建建物取引主任者による重要事項の説明と説明書面の交付が完了され、入居審査までとおっているという状況の場合、申込金は手付金となり返還されないことがあるので注意しましょう。
⑤:初期費用に不要な費用を上乗せする
初期費用に、本来であれば不要な費用を上乗せする悪徳不動産会社もあります。一般的にかかる初期費用は以下のような内訳となります。
名称 | 相場 | |
---|---|---|
一般的にかかる初期費用 | 敷金 | 家賃1ヶ月分 |
礼金 | 家賃1ヶ月分 | |
仲介手数料 | 家賃0.5~1ヶ月分(上限1ヶ月分という法規がある) | |
火災保険料 | 5,000円~20,000円 | |
物件によってかかる初期費用 | 鍵交換費用 | 通常タイプ10,000~20,000円 |
保証会社利用料(連帯保証人がいない場合) | 家賃の50~100% | |
室内消毒料 | 10,000~20,000円 |
悪徳不動産会社の場合、これらの内訳以外に「契約事務手数料」「契約書作成費」という名目による費用の上乗せをしてくることがあります。また、頼んでもいないのに害虫駆除費用や浴室コーティング、排水管クリーニングを高額な料金で請求してくることも少なくありません。このような請求が発生することもありえるため、内訳の内容を1つずつ確認し、不要なものは削除してもらいましょう。
⑥:契約書や重要事項説明書の内容を明確に伝えない
悪徳な不動産会社は、契約書や重要事項説明書の内容を明確に伝えないことがあります。不動産の契約においては、取引主任者により「重要事項の説明、契約成立後における契約内容を記載した書面の交付」が義務付けられています。契約書の内容は難しく、知識がないと理解できないこともあるので、不利な契約をさせられてしまうかもしれません。
もし取引主任者からの説明がない場合には、その旨を伝えて説明をしてもらうようにしてください。
⑦:契約前は丁寧、契約後は雑な対応をする
契約前は丁寧、契約後は雑な対応をするというのも悪徳不動産会社の手口の1つです。このような会社は、契約さえ取ればあとはどうでもよいという態度で接します。契約前は丁寧な対応でも、契約後は連絡が取りにくかったり、相談に対して親身になってくれなかったりするため、なんらかのトラブルがあっても対応してもらえません。
このような手口に引っかかってしまった場合、まずは雑な対応があった旨を伝え担当者を変えてもらいましょう。不動産会社そのものではなく担当者が悪質だったというケースも考えられるためです。それでも解決できない場合は、都道府県宅建協会・不動産無料相談所や各自治体の「不動産取引に関する相談窓口」などに相談してみてください。
⑧:退去時に不当な原状回復費を請求する
退去時に、不当な原状回復費用を請求してくる業者もいるので注意しましょう。原状回復の定義は「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」とされています。また、賃借人への原状回復義務は、「賃借人の通常の使用により生ずる損耗以外の損耗」とされており、自然的な劣化や損耗などの経年変化であれば、原状回復をする必要はありません。
※国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)より
しかし、仲介業者によってはガイドラインを守らず、不当な原状回復費用を請求してきたり、敷金を返還しなかったりすることがあるのです。退去時に原状回復トラブルが起こった場合は、国民生活センターや消費者生活センター、もしくは各都道府県庁に設置されている宅建指導課などへ相談しましょう。
やばい悪徳不動産会社かどうか見分けるポイント
悪徳不動産会社に引っかかりたくないと思っていても、不動産に関する知識がなければホームページや広告だけで良し悪しを見分けるのは難しいかもしれません。しかし、悪徳不動産会社にはいくつかの特徴があります。それらを知っておくと一般の方でも見分けやすいので、ここからはそのポイントを紹介していきます。
①違法看板を出している
違法看板とは、電柱や信号機などに張り付けた看板や公共道路にはみ出ている立て看板などのことです。このような違法看板を出している不動産会社は法を遵守せずに営業をしているといえるため、その時点で信用できないと判断できます。消火栓や郵便ポストなどに貼られていることもあり、街の景観を悪くしていることも少なくありません。
②電話口での対応がよくない
電話口での対応がよくない不動産会社は、営業の基本ができていない、つまり社員教育が不十分な会社だと考えられます。社員教育を十分にしている不動産会社であれば、電話口での対応も丁寧であるはずです。しかし、悪徳な業者は電話対応が横柄だったり、雑だったりすることが多いので、電話対応の仕方は注意してチェックしてみましょう。電話口での対応に違和感を覚えた場合、その後のやりとりで嫌な思いをしたりトラブルに遭遇したりすることも考えられるため、その不動産会社を選ぶことは避けるのがおすすめです。
③営業マンの態度が悪い
電話口だけでなく、営業マンの態度が悪いのも悪徳不動産会社の特徴です。悪徳な不動産会社はあらゆる手口で手数料や契約を取るため、誠実な対応をしない営業マンもいるかもしれません。営業マンの態度は来店しなければわかりませんが、もしお店での態度が悪いと感じたら、個人情報などは教えず、すぐに退店しましょう。
やばい悪徳不動産会社に仲介を依頼しないための対策
ここからは、やばい悪徳不動産会社に仲介を依頼しないための対策を3つ紹介していきます。
①過去に行政処分を受けていないか確認する
過去に行政処分を受けていないかどうか、「国土交通省ネガティブ情報等検索システム」で確認してみましょう。「国土交通省ネガティブ情報等検索システム」とは、国土交通大臣や地方整備局長などがおこなった行政処分を掲載しているサイトで、処分を受けた年月日やどのような違反行為があったかを調べられます。
事業者名や代表者名など必要事項を入力して検索すると、直近から5年以内の処分履歴が表示されます。表示されなければ処分履歴がないと判断できるため、悪徳かどうかあやしいと感じたり、過去に違反行為がないか確認したいというときは利用してみてください。
②不動産ポータルサイトで同物件を比較する
不動産ポータルサイトで同物件を比較すると、仲介を依頼しようとしている不動産会社の質がわかります。不動産ポータルサイトには、同じ物件を取り扱う複数の不動産仲介会社が登録をしていますが、会社ごとに物件画像や紹介文、担当者の顔写真など掲載している内容がそれぞれ異なります。登録内容は会社の誠実さや信用度、やる気などを判断する材料になるので、いい加減な不動産会社に引っかかるのを防ぐことができるのです。
不動産ポータルサイトはたくさんありますが、そのなかでも「ふどサーチ」は同物件を不動産会社ごとに初期費用で比較できる機能や、不動産会社の口コミを見られる機能があるので、優良な不動産会社を探している方におすすめです。
③不動産会社の口コミサイトを利用する
不動産会社の口コミサイトを利用するのもおすすめです。不動産会社の社名と「口コミ」をWeb検索すれば、複数の口コミ結果が表示されるので、できるだけ口コミ数が多いサイトをチェックしてみましょう。もちろん口コミは個人の感想であり、顧客と担当者の相性によっても評価が異なるため口コミだけでは判断できませんが、低評価が多い不動産会社や評価の理由を知ることができるだけでもメリットといえます。
手口・対策を知れば、悪徳不動産会社に依頼する心配なし!
不動産業界に限らず、悪徳業者というのはどの業界にも一部存在します。多くの会社はコンプライアンスを遵守し、営業利益を上げつつ顧客のニーズを満たすための営業をおこなっていますが、なかには顧客に不利益であっても自社の利益だけを追求する会社があるのも実情です。
しかし、手口や対策を知っておけば、悪徳不動産会社に依頼してしまう心配はありません。不動産会社を利用する際は、今回ご紹介した悪徳不動産の手口と対処法や依頼しないための対策などを参考にして、安心して依頼できる良心的な不動産会社を見つけてください。