賃貸物件の申込みは原則早い者勝ちなので、希望条件に合った物件が見つかったらすぐに申し込み手続きをするのがベストです。
しかし、何らかの事情で申し込みをキャンセルしなければいけなくなることもあるかもしれません。
今回は、賃貸申し込みをした後のキャンセルは可能なのか、また違約金などの費用や預り金の扱いについて解説していきますので、入居・引越しの知識のひとつとして覚えておくようにしましょう。
目次
賃貸物件の申し込みは「契約前」ならキャンセルできる
賃貸物件の申し込みは、「契約前」であればキャンセルが可能です。
しかし、不動産会社への入居申し込みや契約の経験が少ないと、どのタイミングでキャンセルを申し出たら良いのかわからないという方もいるでしょう。
まず前提として、賃貸物件を借りる手順は以下のような流れになります。
- 入居申込書に必要事項を記入して手続きをする
- 入居の審査を行うため、必要な書類を提出
- 申込金(手付金・予約金)を払う
- 重要事項説明後、賃貸借契約書に記名・押印をする
上記の流れから、申し込みの段階ではまだ賃貸借契約を結んでいないため、キャンセルすることも可能です。
ただし、申し込みをした時点で大家さんや不動産会社は契約に向けて動いているため、キャンセルができるからといってよく検討せずに申し込むことは控えてください。
契約から入居までの流れについては以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はこちらも併せてチェックしてみてください。
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そもそも「申し込み」や「契約」の定義とは
申し込みの段階であればキャンセルできると聞いても、申し込みと契約の違いがわからないという方もいるかもしれません。厳格な定義はありませんが、ここからは「申し込み」と「契約」の違いについて解説していきます。
申し込みは入居の意思表示
申し込みは、「入居したい」という意思表示を形にしたものといわれています。
ただし、口頭で「入居したい」というだけでは「申し込みをした」とはいえません。申込書に入居審査に必要な個人情報など必要事項を記入した後、不動産会社の担当者を通して大家さんに渡り「申し込み」とみなされます。
申し込み後は、入居審査や預り金の支払いを経て契約となるため、その物件の募集は停止され「仮押さえ」の物件として扱われます。
正式な契約は入居審査を通過してから
申し込みをした後入居審査を経て、契約内容をあらためて確認して正式に契約を結びます。
賃貸借契約では、宅地建物取引士による重要事項説明が行われ、説明に納得したら契約書に署名・捺印をして契約締結となります。
【注意】不動産会社によって「契約成立」の定義は異なるケースも!
賃貸契約を申し込んでいても、契約が成立していなければキャンセルが可能です。ただし、不動産会社によって「契約成立」の定義は異なる場合があるため注意が必要です。
一般的に多くの不動産会社では、重要事項説明をした後、借主・貸主の双方が賃貸借契約書に署名・捺印をした時点で契約成立としています。
しかし法律的な視点では、たとえ賃貸借契約諸へ署名・捺印をしていなくても、双方の合意が取れていれば契約成立と判断されます。これは、「諾成契約」という契約で、不動産会社によっては入居申込書を提出した時点で「契約成立」として扱うこともあるため注意してください。
賃貸借契約に対する双方の認識が違っていると、何らかのトラブルの原因になりかねません。トラブルを避けるには、申し込みの前に念のためキャンセルの扱いについて確認しておくことが重要です。
賃貸物件の申し込みをキャンセルする場合にすべき行動
賃貸物件の申し込みをキャンセルする場合、何からどのように始めればいいのかわからない方もいるかもしれません。
しかし、わからないからといって申し出ることを先延ばしにしていると、ますます断りにくい状況になってしまったり、迷惑を賭けてしまったりすることになるので要注意です。
ここからは、キャンセルする場合にはどのように行動すべきか詳しく解説していきます。
直ちに不動産会社に連絡する
キャンセルすると決めた場合、まずは不動産会社に連絡をしてください。
たとえ迷っている段階であったとしても、不動産会社側では契約の準備を進めているので、遅くとも「重要事項説明」を受ける前までに伝えましょう。
「重要事項説明」は、賃貸借契約を結ぶ当事者に対して、契約において重要な事項を説明することです。これは、宅地建物取引業法で定められているあるため、どの不動産会社でも契約前に必ず行われます。
なお、入居審査に通ると不動産会社から重要事項説明に関する連絡が入りますが、キャンセルを考えている場合はその前にこちらから連絡をするのがマナーです。
また、言い出しづらいからといって無断キャンセルをするのは絶対に控えましょう。
申し込みによってその物件は仮押さえの状態になり、キャンセルをするまでは入居希望者を募ることができないため、不動産会社や大家さんに多大な迷惑をかけてしまいます。
連絡方法は、メール・電話のどちらでも問題ありません。ただし、メールだと担当者に伝わるまでにタイムラグがある場合もあるため、できるだけ電話で伝えることをおすすめします。
理由を正直に話して謝罪を行う
キャンセルの連絡を入れる場合、理由を正直に話して謝罪を行いましょう。
理由を話すことや謝罪することは義務ではないため、特にしなくてもペナルティはありませんが、物件探しや内見案内、各種手続きなどサポートをしてくれてた動産会社に対して不誠実な対応を取るのはマナーに反するといえます。
もし、一時的に引越しを取りやめたことが理由であれば、次回以降の物件探しでお世話になるかもしれません。そのときにお互い気まずい思いをしないためにも、理由を正直に話して納得してもらうのがベストです。
賃貸物件の申し込みをキャンセルするときにかかる費用
いざキャンセルするとなった場合、費用がいくらかかるのか不安という方もいるかもしれません。
ほとんどの場合キャンセル料はかかりませんが、申込金や預り金の名目でお金を支払っている場合は、タイミングによっては返金されないことがあります。ここからは、キャンセル料について解説していきます。
契約手続きを進める前の段階
契約手続きを進める前の段階であれば、特に費用が発生することはありません。ただし、不動産会社によっては申し込むときの条件として、キャンセル料の規定を設けているところもあります。
不動産会社は、申し込みを受け付けた時点で物件の入居者の募集を停止します。そのため、契約締結にいたらなかった場合は、再度募集をかけて入居希望者を募らなければなりません。
安易な申し込みとキャンセルによって、次の入居者が決まるまで時間が空いてしまうことを避けるため、キャンセル料を設けていることがあるのです。
もし仲介している不動産会社がペナルティを設けている場合、契約前でも支払う必要があるため、事前にキャンセル料の有無について確認しておくと安心です。
契約手続きが完了&入居前の段階
契約手続きが完了していれば、キャンセルではなく「解約扱い」になります。
「解約扱い」の場合、まだ入居していないとしても部屋を退去するのと同じ扱いになるので、申込金や預り金はもちろん、礼金や仲介手数料などの初期費用は原則戻ってきません。
ただし、敷金は退去時の原状回復費用に充てられるものなので、入居していない状態であれば返金される可能性もあります。
不動産会社に預けた「預り金」は戻ってくる?
物件の申し込みをするときには、「入居する意思がある」という証拠として、不動産会社に申込金や預り金を支払う場合があります。金額は不動産会社によって異なりますが、上限は家賃1ヶ月分とされています。
このお金は、契約締結までの間不動産会社が預かっているものので、契約手続きを進める前の段階であれば全額返金してもらうことが可能です。
ちなみに預り金や申込金の返金拒否については、宅地建物取引業法で禁止されています。
ただし、お金の名目が「手付金」である場合は返金されないので、支払時には必ず名目を確認してください。また、トラブルにならないよう預かり証を発行してもらうのも忘れないようにしましょう。
申し込みのキャンセルをする場合は誠実な態度で謝罪しよう
誰もが納得するような理由があればキャンセルも切り出しやすいですが、「他に良い物件が見つかった」など自己都合が理由の場合はキャンセルを言いだしにくいかもしれません。
しかし、不動産会社は入居審査や契約に向けて動き出すので、どんな理由であっても早めに謝罪をして必要な手続きを始めることが重要です。
もちろん、キャンセルをすれば迷惑をかけることになりますが、契約前であれば受け付けてもらえる他、預けているお金も返金されます。
ただし、契約成立とみなされるタイミングは不動産会社によって違うので、今回ご紹介した内容をしっかりと理解しておきましょう。