賃貸契約にかかる初期費用の内訳・相場を解説!安く抑える方法も紹介します

家の模型と電卓(賃貸契約にかかる初期費用を計算する様子)

引越しにかかる費用を調べてみたとき、予想以上の予算が必要で驚いたという人も多いのではないでしょうか。新しい居住環境を整えるには、十分な予算が必要なことはもちろんですが、初期費用を上手に抑える方法を理解することも大切です。

今回は賃貸契約時にかかる初期費用の内訳・相場と、費用を安く抑える方法をご紹介します。また、各費用がなぜ必要なのかも解説していきますので、「新居選びをお得に済ませたい」「高額な初期費用をなんとかしたい」といった人はぜひチェックしてみてください。

賃貸契約にかかる「初期費用」とは?

賃貸契約時にかかる初期費用とは、賃貸物件を所有している大家さんや仲介業者などへ支払う費用のことを指します。まとまった費用が必要となるので、以下から解説する各費用の内訳を確認し、事前に準備しておきましょう。

初期費用の内訳

初期費用の主な内訳は以下のとおりです。

①敷金
②礼金
③仲介手数料
④前家賃・前管理費
⑤その他かかる可能性のある費用

各費用について、どのようなものかや相場をご紹介します。

①敷金

敷金とは、退去後の原状回復や家賃滞納時などへ補填されるお金です。原状回復時の費用として充てられた場合、残った敷金は自分の手元へ戻ってきます。賃貸物件によっては敷金無料の物件もありますが、その場合は退去時に原状回復費用を支払うこともあるため注意しましょう。敷金の相場は家賃の1ヶ月分です。

②礼金

礼金は、賃貸物件を所有している大家さんへ「部屋を貸してもらうお礼」として支払うお金です。そのため、敷金とは異なり退去後の返還はありません。また礼金についても、物件によっては無料のものがあります。礼金の相場は家賃の1ヶ月分です。

③仲介手数料

仲介手数料は、賃貸物件を紹介してくれた仲介業者(不動産会社)へ支払う手数料です。仲介手数料無料の賃貸物件もありますが、基本的に支払わなければならない初期費用として考えておきましょう。また、仲介手数料には法律上の限度額が決められており、家賃の約1ヶ月分+消費税(現在は家賃×1.1)が上限です。

④前家賃・前管理費

前家賃・前管理費は、契約月分(日割り計算)+翌月分の家賃・管理費として支払う費用のことです。これらは家賃や管理費滞納のリスクを防ぐための費用として、大家さんへ支払います。

⑤その他かかる可能性のある費用

その他にかかる可能性のある初期費用は以下が挙げられます。

【その他の初期費用】

項目費用が発生する理由相場
保証会社関連の料金連帯保証人の代理となってくれる保証会社への費用家賃の約0.5~1ヶ月分
(保証会社による)
鍵の交換費用防犯を目的に新しい鍵へ付け替える費用約10,000~20,000円
消毒料室内の消毒施工費用約10,000~20,000円
火災保険料災害時に補償が受けられる保険の費用約10,000~20,000円

火災保険料は、エリアや補償内容によって金額に差が出ます。火災保険への加入が必須でない物件もありますが、万が一のことを考えると基本的には加入するのがおすすめです。どのくらいの範囲の補償が必要かを考えて、予算とのバランスを見ながら契約しましょう。

初期費用のシミュレーション

金額別に初期費用をシミュレーションし、具体的にいくらくらいかかるのかイメージしてみましょう。

【家賃50,000円の場合】

項目金額
敷金50,000円
礼金50,000円
仲介手数料55,000円
前家賃・前管理費50,000円
その他82,500円
合計287,500円


【家賃70,000円の場合】

項目金額
敷金70,000円
礼金70,000円
仲介手数料77,000円
前家賃・前管理費70,000円
その他97,500円
合計384,500円


【家賃100,000円の場合】

項目金額
項目金額
敷金100,000円
礼金100,000円
仲介手数料110,000円
前家賃・前管理費100,000円
その他120,000円
合計530,000円

※その他の項目は【その他の初期費用】を家賃ごと平均額で算出しています


上記はあくまでも例ですが、引越しの予算を組むときは参考にしてみてください。

初期費用を支払うタイミング

初期費用を支払うタイミングは入居審査後です。審査を通過して、契約開始日(入居日)までに初期費用を支払います。支払いが遅れてしまうと信用問題に発展するため、指定された期日までに必ず支払いましょう。

賃貸契約の初期費用の相場はいくら?

ここからは賃貸契約時の初期費用相場について、前述した内訳をもとに解説します。

家賃の5~6ヶ月分かかる場合が多い

国土交通省が公表しているデータによると、賃貸契約における初期費用の相場は家賃の5~6ヶ月分かかるケースが多いです。各内訳の相場とともに、具体的な金額を見ていきましょう。

【各費用の内訳と相場】

内訳費用相場
敷金77,422円
礼金77,422円
前家賃77,422円
仲介手数料85,164円
その他(保証料金、鍵交換、消毒、火災保険)約71,000円
合計388,430円

※家賃の相場を77,422円として計算
※出典:国土交通省 平成30年度 住宅市場動向調査報告書

初期費用の合計値は家賃がベースとなる部分が大きいため、費用を抑えたい場合、まずは家賃の見直しを図ることも大切です。

引越しや家具・家電の購入にかかる費用も追加される

引越し完了までにかかる初期費用には、前述した賃貸契約の費用に加え、引越し費用や家具・家電の購入費なども追加されます。引越し費用を抑えたい場合は、業者の繁忙期を避けたり運搬する荷物の量を減らしたりすることがおすすめです。

また、家具・家電は生活していくうえで必須なものも含まれているため、余裕を持った予算を準備する必要があります。

各費用の詳細は、「一人暮らしを始めるのにかかる初期費用はいくら?安く済ませる方法も紹介」の記事でも解説しているので、引越し前に一度チェックしてみてください。

賃貸契約の初期費用を安くできる7つの方法

ここからは、賃貸契約の初期費用を安くできる方法を7つ解説します。

①敷金・礼金なしの物件を選ぶ

敷金・礼金なしの物件を選ぶことで、初期費用を抑えられます。敷金・礼金は合わせると家賃2ヶ月分以上となるため、賃貸物件によっては数十万円単位の費用を節約できます。

ただし、初期費用が抑えられるという理由だけで契約に踏み切ってはいけません。敷金・礼金が無料となる理由やメリット・デメリットについても理解してから契約を検討しましょう。

<敷金・礼金が無料になる理由>
・何らかの理由で空室が続く物件の対策(駅から遠い・築年数が古いなど)
・家賃滞納時に充てる敷金が、保証会社の利用を必須の入居条件とすることで不要になるため
・退去時に原状回復費用を請求するため、入居時の敷金が不要となる
・謝礼として支払われる礼金を不要と感じる大家さんがいるため

<メリット>
・初期費用が抑えられる
・退去時に返還されないものである礼金の費用を抑えられる

<デメリット>
・家賃が相場より高い可能性がある
・物件に問題がある場合もある(日当たりが悪い、隣人とのトラブルが多いなど)
・退去時の原状回復費用、ハウスクリーニング代が別途でかかる
・違約金が設定されていることもある(〇年以内の退去で違約金が発生するなど)

敷金・礼金が無料の場合、退去時に必要な原状回復費を別で用意する必要があり、その費用が多額になる可能性もあるので注意しなければなりません。ほかには違約金が設定されている場合もあるため、契約内容をしっかり確認してください。

敷金・礼金が無料の物件を選ぶ際は、エリア内の家賃相場や物件情報、物件周辺の状況、契約内容などもチェックしてから判断しましょう。

②フリーレント物件を選ぶ

フリーレント物件とは、一定期間の家賃が無料になる物件です。このフリーレント物件についても、理由やメリット・デメリットを理解しておきましょう。

<フリーレント物件として貸し出される理由>
・空室対策
・物件の資産価値を下げないため(家賃を下げると資産価値が下がる)
・物件のなかで一室だけ家賃を下げた場合、他の部屋の入居者との公平性がなくなるため

<メリット>
・初期費用が抑えられる
・旧居との二重家賃が発生しにくい

<デメリット>
・家賃が相場より高い可能性がある
・敷金や礼金、手数料など他の費用が高い可能性がある
・退去までの期間が定められており、違約金が高額な可能性がある

フリーレント物件は、家賃を一定期間無料とする代わりに契約期間が定められている場合もあり、それよりも早く退去すると違約金が発生するおそれがあります。また、そもそも家賃が相場より高い場合もあり、トータルコスト(入居~退去までの費用)が通常より高くなる可能性もあるため、契約前には費用の計算を行いましょう。

③仲介手数料が安い物件を選ぶ

仲介手数料が安い物件を選ぶと、家賃0.5~1ヶ月分くらいの費用を抑えられます。引越しの予算に少しでも余裕を持たせたい場合は、仲介手数料にも注目しましょう。仲介手数料が無料になる理由と、メリット・デメリットについては以下のとおりです。

<仲介手数料が無料になる理由>
・仲介業者の自社物件(物件仲介の手数料なしでも収益が得られる)
・大家さんからのみ仲介手数料をもらっている

<メリット>
・家賃0.5~1ヶ月分の初期費用が抑えられる

<デメリット>
・家賃や敷金、礼金など他の費用が高い可能性がある
・別の名目で仲介手数料が請求されている可能性がある

仲介手数料無料の賃貸物件のなかには、仲介手数料という名目ではなく「事務手数料」や「書類作成費」などの名目で費用を請求されている場合もあります。契約前は、他の項目やその金額についてもよく確認しておきましょう。

④家具・家電付き物件を選ぶ

家具・家電付きの賃貸物件を選ぶことで、初期費用を抑えることも可能です。家具・家電の購入費はもちろん、引越し業者へ依頼する荷物の量が少なくなるため、引越し費用を抑えることにも繋がります。では、なぜ家具・家電が備え付けられているのか、メリット・デメリットはあるのかを見ていきましょう。

<家具・家電が備え付けられている理由>
・入居希望者を増やすため(学生や単身赴任など短期間の入居者)
・物件に付加価値を付けるため

<メリット>
・家具、家電を自分で購入する必要がない
・家具、家電が設置済みのため事前に部屋の寸法を測る必要がない
・引越しの荷物が少なくなる

<デメリット>
・自分好みの内装にできない
・家具、家電を選べない
・備え付けの家具、家電は使用済み(以前の入居者)

家具・家電付き物件は、備え付けのものを使わなければならないので、借りる部屋を自分好みにアレンジしにくくなります。さらに、各設備はどれも使用済みな可能性があるため、中古品などへ抵抗感のある方は住みにくいかもしれません。

ただ、引越しの荷物が少なくなったり家具・家電の購入費がかからなかったりとメリットも大きいため、短期間しか住まない方や内装はあまりこだわらなくても良いという方にはおすすめといえます。

⑤閑散期に契約する

閑散期に契約すると、敷金・礼金や家賃などの減額交渉に応じてもらえる可能性があります。不動産業界における閑散期は5月後半~7月・11~12月です。では、なぜこの時期が閑散期にあたるのか、閑散期に契約するメリットやデメリットなどを見ていきましょう。

<閑散期が発生する理由>
・入学や転職、転勤などの引越しイベントと重ならないため

<メリット>
・空室対策として、家賃や敷金、礼金の減額交渉に応じてもらいやすい
・繁忙期でも空室が続いていた賃貸物件の場合、閑散期に入居条件の見直しを図っている可能性がある
・不動産会社の混雑具合も落ち着いており、ゆっくり部屋探しができる

<デメリット>
・繁忙期に空室が埋まってしまい、物件情報が少ない可能性がある
・好条件の立地や設備などの賃貸物件は、すでに埋まっているおそれがある

閑散期は不動産会社の混雑具合も落ちついており、じっくり部屋探しができたり値下げ交渉がしやすくなったりしますが、空室物件は少ないかもしれません。そのため、自分好みの賃貸物件に出会えるまで時間がかかる可能性もあります。

しかし、閑散期は引越し業者も空いているため、引越し日程の希望が通りやすかったり費用が安く済んだりします。初期費用を少しでも抑えたいという方には、閑散期の引越しがおすすめです。

⑥分割払いにしてもらう

不動産会社・物件によっては、初期費用を分割払いにしてもらうことができます。敷金・礼金や前家賃などをクレジットカードで分割払いすることで、引越しの予算に余裕を持たせることが可能です。ただし、分割払いにもメリット・デメリットがあるので、事前に確認して自分に合った支払い方法かどうか確認しましょう。

<分割払いに応じてくれる理由>
・入居希望者を集めやすくするため(空室対策)

<分割払いのメリット>
・引越しの際、まとまった費用が必要なくなる
・クレジットカードのポイントを貯められる

<分割払いのデメリット>
・分割手数料がかかる
・クレジットカード会社が指定されている可能性がある
・対応している不動産会社が限られている

分割払いはすべての不動産会社が対応しているわけではないため、注意が必要です。またクレジットカード会社が指定されていることもあるので、支払い方法や対応しているカードについて、事前に不動産会社へ確認しておいてください。

また、基本的にクレジットカードでの分割払いには手数料が発生します。トータルの初期費用が通常より高くなることも理解しておきましょう。

⑦値下げ交渉をする

初期費用を少しでも抑えたい場合は、値下げ交渉も行ってみましょう。必ずしも応じてもらえるわけではありませんが、大家さんや不動産会社によっては対応してもらえます。ただし、値下げ交渉にはメリット・デメリットがあるので、事前に確認しておいてください。

<値下げ交渉できる理由>
・空室対策のため

<メリット>
・初期費用が抑えられる

<デメリット>
・契約が決まるまでに時間がかかる
・審査落ちのリスクがある

値下げ交渉は、最初に提示されたものとは異なる条件で契約をするために行うものです。そのため条件のすり合わせが必要となり、通常よりも契約に時間がかかる可能性もあります。

さらに欲張って交渉を行うと、「家賃が払えないのでは」「入居後にトラブルを起こすかも」と大家さんに思われてしまうおそれがあります。そうなると審査落ちのリスクに繋がることもあるため、あまり欲張りすぎないことが大切です。

初期費用の相場や抑え方を理解して、できるだけお得に契約しよう

初期費用を抑えたい場合は、費用相場や抑え方のポイントを理解することが重要です。相場を知らなければ、どのくらい費用を下げられればいいのか、結果的にいくらくらい抑えられたのかがわかりません。正しいやり方を理解して実践することで、不動産に関する専門知識がなくても大きな節約が叶います。

また、注意点として「初期費用を抑える方法」にはデメリットがあることも忘れないでください。場合によっては自分の条件にマッチする物件を選べないことや退去時の費用が必要となることもあります。メリットとデメリットを照らし合わせて、自分に合った方法かどうかを視野に入れながら、抑えられそうな費用を探してみましょう。

ふどサーチ編集部