引越しをすると決まったとき、住んでいたのが賃貸物件であれば、退去の手続きをして契約を終了させなければなりません。
しかし、どこに退去の連絡をすればよいかや連絡時期などがわからないという方もいるのではないでしょうか。賃貸物件の退去手続きは、契約書の内容をよく確認しておかなければ、後々トラブルに発展する可能性があります。
そこで今回は、退去手続きの連絡や退去までの流れについて詳しく解説していきます。退去手続きについて疑問や悩みを解消させたい人は、ぜひ最後まで目を通してみてください。
目次
賃貸物件の退去連絡は「1ヶ月前」が一般的!
賃貸物件の退去連絡は、退去日の1ヶ月前までに行うよう、期限を設定した物件が多いです。ただし、物件によって違いがあり、人気物件であれば2ヶ月前までと設定されることもめずらしくありません。
直前に連絡してしまうと、大家さんに迷惑をかけたりトラブルに発展したりすることもあるので、退去の連絡は早めに行うことが大切です。
退去連絡に関する記載はどこにある?
退去連絡に関する記載は、契約書の「解約予告期間」にあります。1ヶ月と記載されていれば、1ヶ月以上前には退去する旨を伝えなければなりません。また、連絡先についても契約書に記載があるので、それに従って手続きを進めましょう。
また、契約書に解約通知期間が記載されていない場合は、退去日の3ヶ月前に連絡します。法律上(民法617条)、期間の定めがない場合はいつでも解約できますが、賃貸契約が終了となるのは解約を申し込んだ3ヶ月後です。しかし、「急に引越すことになるかもしれない」「本当に3ヶ月以内に退去申し込みをすれば問題ないか不安」という場合には不動産会社へ問合せてみてください。
退去連絡の期限を過ぎたらどうなる?
退去連絡の期限を過ぎた場合は、引越したあとに翌月の家賃を請求されるので注意が必要です。すでに合意した契約書に記載された期限なので、遅れた場合は翌月まで契約が継続されてしまいます。次の入居先が決まっていると家賃を二重に支払うことになるため、契約書の内容は早めに確認しておきましょう。
家賃の二重払いについては以下の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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賃貸物件の退去連絡先は「大家さん」か「管理会社」まで
賃貸物件の退去連絡は、基本的に「大家さん」か「管理会社」へ行います。しかし、契約書に連絡先の記載がない場合もあるため、次項からはこのようなケースの対処法や連絡方法について解説します。
連絡先がわからない場合はどうしたらいい?
契約書を見ても連絡先がわからない場合は、入居の際に手続きをした不動産会社へ問合せてみましょう。
不動産会社を通じて「大家さん」か「管理会社」へ連絡し、退去する旨を伝えます。また、不動産会社が賃貸物件を管理している場合は、不動産会社へ退去する旨を伝えれば退去手続きを進められます。
注意点として、住んでいる賃貸物件が大家さんや管理会社が所有しているものの場合、不動産仲介業者へ連絡しても、退去手続きは進められません。あくまでも不動産会社は仲介役なので、契約に関する手続きは契約者間で行う必要があります。
契約書に記載がなく連絡先がわからなくても、不動産会社には誰に連絡すればよいかや連絡先を問合せられるだけで、退去連絡そのものは大家さんか管理会社に行わなければなりません。
退去の申し出は電話で行うべき?
退去の申し出は電話で行い、その後正式な手続きへ移ります。退去連絡の電話で、必ず伝えるべき項目は下記の3つです。
①建物名と部屋番号
②氏名
③退去希望日
このとき、電話と併せて退去の旨をメールで知らせておくと「言った・言わない」や「退去時期の認識に齟齬があった」などのトラブル防止に繋がります。
また、電話・メールでの連絡はあくまでも「退去手続きを進めたい」という意思を伝えるものなので、これに併せて解約通知書を提出しなければなりません。
書類は郵送するのが一般的ですが、住所の記載ミスで届かない可能性もあるので、送付後は届いたかどうか電話などで確認しておくと安心です。
また、物件や会社によってはWEB上から解約申し込みを受け付けているケースもあるので、契約した不動産会社のホームページで手続き方法を確認してみましょう。
賃貸物件の退去連絡を伝え方から退去までの流れ
次に賃貸物件の退去連絡について、伝え方から退去までの流れを解説します。一通り目を通し、準備すべきことを把握しておきましょう。
①電話で退去したい旨を伝える
まずは電話で退去したい旨を伝え、解約の意思表示を行いましょう。電話連絡の流れは次のとおりです。
<電話連絡の流れ>
自分:○○マンション、△△号室に住む××です。○月での退去を考えていて、手続きを行いたいのですが。
管理会社:〇月での退去ですね。お渡ししている解約通知書に必要事項を記入して返送をお願いいたします。
先述にもありますが、「どこの」「誰が」「いつ退去するのか」これらを伝えられれば、スムーズに手続きを進められます。
②「解約通知書」を送付する
解約通知書の必要事項を記入して、管理会社・大家さんへ送付しましょう。解約通知書は入居時に渡される他の契約書類と同封されている可能性が高いので、退去連絡の前に確認しておくとスムーズです。
もし解約通知書を紛失した場合は、管理会社や大家さんへ連絡すれば再発行してもらえます。
必要事項を記入後、解約通知書を郵送で送付します。もし何かしらの手違いで送付できていなかった場合、今後の手続きが進まなくなってしまうので、送付後は先方へ届いたかどうか確認しましょう。このとき、「郵便追跡サービス」を利用すると無事に届いたかどうか確認できます。
③新居への引越し準備を行う
退去手続きが済んだ後は、新居への引越し準備を始めます。引越し準備は以下3つを進めましょう。
<引越し準備>
・自宅内の家具や私物などを仕分ける
・引越し業者へ連絡
・室内の清掃
仕分けの際は、不用品をリサイクルショップやフリマアプリなどで販売すると、引越し費用や新居で使うものなど他の必要経費に充てられます。
リサイクルショップの場合、持ち込みだけでなく出張サービスを提供している業者もあるので、持ち運ぶのが面倒な方はそのようなところを利用すると便利です。
一方、フリマアプリはいつ売れるか先が読めず、結局新居へ持って行かなけらばならないことも起こり得るので、早めに出品することがおすすめです。
また、3~4月は引越し業者の繁忙期なので、この時期は予約が取りにくいかもしれません。特に入学式・入社式を控えているなど繁忙期に引越しが必要な方は、少しでも早く連絡して引越し予定日を伝えておきましょう。
引越し準備では、室内の清掃もしなければなりません。経年劣化等もあるので、入居時と全く同じ状態にもどす必要はありませんが、手の届く範囲で清掃や修復をしておきましょう。とくに水回りはカビなどが発生やすいので、注意して確認することがおすすめです。
④退去の立ち会いに同席する
荷物の運び出しと清掃が終了した後は、退去の立ち会いに同席します。
立ち会いでは室内の傷や汚れをチェックして、修繕が必要かどうか判断されます。修繕が必要な傷や汚れがあった場合、貸主・借主どちらが費用を負担するものか判断されるので、以下のポイントを押さえておきましょう。
<立ち会いで押さえておくべきポイント>
・入居時に撮影した部屋の写真があれば用意する
・原状回復のガイドラインを把握しておく
心当たりのない傷や汚れで修繕費用を請求されないためにも、入居時に撮影した写真があれば、大家さん・管理会社へそれらを見せましょう。入居時からある傷・汚れの場合、入居者が修繕費を負担する必要はありません。
また、国土交通省では賃貸物件における原状回復のガイドラインを設けています。このガイドラインによると、「通常の生活による傷や汚れに関しては、入居者が修繕費用を負担する必要がない」という旨の記載があります。ただし、日頃の清掃を怠ったことによって汚れや傷が深刻な状態になっている場合は、修繕費用を入居者が負担しなければならないので注意しましょう。
※参考:国土交通省 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
原状回復に関することは、以下の記事でより詳しく解説しています。退去費用の負担範囲や相場、もし不当な高額費用を請求された場合の対処法なども含んでいるので、気になった方はぜひチェックしてみてください。
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⑤退去費用を支払う
退去費用として支払う費用は以下の2つが挙げられます。
<退去費用について>
・退去月の家賃
・修繕費用
退去月の家賃は日割りや1月分など、賃貸物件によってそれぞれ異なりますが、契約書に記載があるので事前に確認しておきましょう。
なお、修繕費用は契約時に支払った敷金で賄われますが、これだけでは賄いきれない場合、追加で修繕費用を支払う必要があるため注意が必要です。また、敷金から修繕費用を差し引いて余ったお金がある場合、そのお金は基本的に返金されます。返金時期は退去後1ヶ月以内が目安ですが、具体的な時期は大家さんや管理会社に確認しましょう。
賃貸物件の退去連絡以外に行う手続き
賃貸物件を退去する際は、退去連絡以外にも進めなければならない手続きがあります。次項から解説する4つの手続きを進め、トラブルなく退去日当日を迎えましょう。
ライフライン(水道・ガス・電気)に関する手続き
ライフラインに関する手続きは、旧居の解約・新居の契約が必要です。どちらも退去日の1週間前までには手続きを済ませて、スムーズに新生活が始められるよう準備しましょう。
また、手続きはオンラインや電話で行えます。なかには24時間対応の業者もありますが、必須の手続きなので手の空いた際に済ませておきましょう。
なお、ガスの開栓に関しては立ち会いが必要です。退去日までに開栓作業の予約を入れて、新居への入居日から利用できるようにしておきましょう。こちらも引越し繁忙期だと予約を取りにくい可能性があるため、早めに連絡することがおすすめです。
火災保険の解約手続き
入居時に契約した火災保険に関しても、解約手続きを行います。解約をしないまま新居へ引越してしまうと、不要な保険料を支払ってしまうおそれがあるため注意してください。
解約手続きは契約した保険会社へ連絡して解約の旨を伝え、必要書類を提出するだけです。保険会社によってはオンライン上で手続きできることもあるので、保険会社のホームページで手続き方法を確認してみましょう。
また、火災保険を途中解約した場合、解約返戻金を受け取れる可能性があります。保険契約の未経過期間(契約が満期になるまでの期間)があるケースに限られますが、損をしないためにも忘れずに解約手続きを行ってください。
転出届などの役所手続き
引越しの際に行う役所手続きには3種類あり、状況に応じて適切な手続きを行う必要があります。各手続きの特徴とスケジュールは次のとおりです。
【各種手続きについて】
届出の種類 | 特徴 | スケジュール |
---|---|---|
転出届 | ・他の市区町村へ引越す際に行う手続き ・旧住所の役所で転出届を提出し転出証明書を発行 ・新住所の役所で転出証明書を提出 | ・住所を移すまで ・先に住所を移した場合は14日以内 |
転居届 | ・同じ市区町村へ引越す際に行う手続き ・同地区の役所へ転入届を提出 | ・住所を移して14日以内 |
転入届 | ・他の市区町村へ引越す際に行う手続き ・新住所の役所で転入届を提出 | ・住所を移して14日以内 |
転出届と転居届は似ていますが、旧居と違う市区町村へ引越す場合は転出届、旧居と同じ市区町村へ引越す場合は転居届という違いがあるため、気をつけてください。
また、転出届は旧住所の役所で手続きしなければなりません。とくに旧住所と新住所が離れている場合、引越しを済ませてからでは余計な手間と時間がかかってしまうので、引越し準備中に手続きを済ませてしまいましょう。
郵便物の転送手続き
引越しの際、郵便物の転送手続きを行わなければ旧住所に郵便物が届けられてしまうため、忘れないようにしましょう。転送手続きに必要なものは次のとおりです。
<転送手続きに必要なもの>
・本人確認できる書類(運転免許証や健康保険証など)
・旧住所の確認が取れる書類(運転免許証やパスポートなど)
これらを窓口へ持っていけば、転送手続きが行えます。オンライン上でも手続き可能なので、窓口へ足を運べない人は利用してみてください。
注意点として、手続きは引越し準備中に行うことがおすすめですが、転送開始希望日は新居へ引越した当日からに設定しましょう。もし希望日が早すぎると、まだ誰も住んでいない住居へ郵便物が送られてしまいます。提出前に、転送開始希望日に問題がないか再度チェックしておくと安心です。
また、下記の記事では引越し手順のポイントをより詳しく解説しています。「初めての引越しで不安が大きい」「引越しをスムーズに行いたい」「細かいところまで知っておきたい」という方は、こちらもチェックしてみてください。
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賃貸物件を退去すると決めたら早めに大家さんへ連絡しよう
賃貸物件を退去する際は、事前に契約書を確認して退去連絡のタイミングや連絡先などを把握しておきましょう。
基本的には大家さん・管理会社への退去連絡が必要ですが、連絡期限や連絡先がわからない場合は、利用した不動産会社へ確認してみてください。
さらに、退去では以下のような手続きも行う必要があります。
<退去の際に行う手続き>
・ライフライン(水道・ガス・電気)に関する手続き
・火災保険の解約手続き
・転出届などの役所手続き
・郵便物の転送手続き
上記の手続きを忘れてしまうと、新居での生活に支障をきたすおそれがあります。特に期日が決まっている手続きについては、忙しくても忘れないようメモを残し、仕事の休憩時間や休日など空いた時間で済ませておくようにしましょう。