心理的瑕疵物件とは?認定されるケースや告知義務について徹底解説!

模型の賃貸物件が立ち並んでる様子

心理的瑕疵(しんりてきかし)物件と聞くと少々難しそうに思えますが、事故物件と聞くとわかる人も多いのではないでしょうか。心理的瑕疵物件は、一般的に事件や事故が起きた物件のことを指しますが、認定されるケースが幅広く、人が亡くなったから心理的瑕疵物件に該当すると決められているわけではありません。今回は、心理的瑕疵物件について、認定されるケースや住む際のメリット・注意点に触れながら詳しく解説していきます。

心理的瑕疵とは

心理的瑕疵(しんりてきかし)は、直接的な被害や機能的な瑕疵はないものの、心理的な抵抗を感じる状態のことを指す言葉です。心理的瑕疵物件の例として、自殺や殺人などが起きたいわゆる「事故物件」と呼ばれるものがあります。

そもそも「瑕疵(かし)」とは、本来あるべき機能や品質が欠陥している状態です。心理的瑕疵以外にも、「物理的瑕疵」「法律的瑕疵」「環境的瑕疵」があります。

■物理的瑕疵・・・建物や土地に欠陥があるもの
■法律的瑕疵・・・建築基準法や都市計画法など法的な問題があるもの
■環境的瑕疵・・・物件の周辺環境に問題があるもの

ここからは、どのようなケースが心理的瑕疵物件に認定されるかについて説明していきます。

心理的瑕疵物件と認定されるケース

心理的瑕疵物件は、物理的瑕疵や法律的瑕疵と異なり、住む人がどのように感じるかが重視されます。人それぞれ感じ方が違うため明確な判断基準はありませんが、入居希望者が「過去に起きたことを知っていたら借りない」と思えば、心理的瑕疵物件であるとされます。

人それぞれの解釈によって違ってくるものですが、いったいどのような物件が心理的瑕疵物件に該当するのでしょうか。一般的に、主に以下の4つのケースが該当すると言われています。

①自殺・殺人や事故による死亡があった場合
②周辺で事故や事件があった場合
③周辺に嫌悪施設がある場合
④周辺に指定暴力団などの事務所がある場合

ひとつずつ説明していきます。

心理的瑕疵物件と認定されるケース①:自殺・殺人や事故による死亡があった場合

心理的瑕疵物件と認定される代表的なケースが、自殺や殺人、火災などの事故死があった場合です。また、原因不明の死も心理的瑕疵物件にあたります。精神面での負担が大きくなるので、上記のようなことがあれば心理的瑕疵物件とみなされるのです。

しかし、自然死や病死、誤飲や転倒などによる不慮の事故などは、入居者に重大な影響を与える可能性が少ないと考えられるため該当しません。ただし、自然死や病死でも長期間発見されず、特殊清掃をした場合には、心理的瑕疵物件と認定されることがあります。

心理的瑕疵物件と認定されるケース②:周辺で事故や事件があった場合

入居希望の賃貸物件で事故・事件が起きていなくても、周辺で事故物件に該当する施設やマンションなどがあれば心理的瑕疵物件と認定されることがあります。たとえば、同じ建物内の違う部屋や近隣のお店などでニュースに取り上げられるほどの事故が起きたり、世間に広く知れ渡る残忍な事件があったりした場合には、社会的影響の大きさから心理的瑕疵物件と判断されます。

心理的瑕疵物件と認定されるケース③:周辺に嫌悪施設がある場合

嫌悪施設とは、周辺住民から敬遠される施設のことです。たとえば、下水処理場や原子力発電所など、健康被害のリスクがある施設などが挙げられます。また、風紀や治安の悪化が懸念される刑務所や公営競技場、墓場や心霊スポットも嫌悪施設に該当します。

心理的瑕疵物件と認定されるケース④:周辺に指定暴力団等の事務所がある場合

近所に指定暴力団の事務所がある場合も、心理的瑕疵物件と認定されるケースのひとつです。組員の出入りによる治安面の不安の他、組同士の抗争に巻き込まれる危険性があるからです。

心理的瑕疵物件の告知義務

心理的瑕疵物件を所有する大家さんや仲介する不動産会社は、入居者に対して過去に起きた事件や事故について告知しなければなりません。しかし、心理的瑕疵は人の感情が重視されるため、物件が心理的瑕疵物件にあたるかどうかの線引きが難しく、不動産会社によって告知の対応が異なっていました。

心理的瑕疵物件かどうかは入居者に重大な影響を与えるため、共通の判断基準として国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました。このガイドラインには、『宅地建物取引業法上、当該事案の存在について事実を告げる必要がある』と記載されています。

賃貸物件の告知義務は、事件・事故発生からおおむね3年が経過した場合と定められています。また不動産会社によっては、事件・事故から1人目の入居者には告知するが、2人目以降には告知しないと決めているケースもあります。

心理的瑕疵物件に住むメリットと注意点

心理的瑕疵は人によって受け止め方が違うため、「心理的瑕疵がある物件でも気にならない」という人も中にはいます。心理的瑕疵物件にはいくつかのメリットがあると言われていますが、いったいどのようなメリットがあるのでしょうか。ここからは、実際に住んだ場合のメリットの他、意識すべき注意点について解説していきます。

心理的瑕疵物件に住むメリット

心理的瑕疵物件に住むメリットは、以下の3つです。

・家賃が相場より安い
・家賃交渉がしやすい
・競争率が低い

最大のメリットは、家賃が相場よりも安いことです。周辺の物件の相場よりも20〜30%安くなる場合もあり、事件や事故、嫌悪施設の存在が気にならない人にとっては大きなメリットと言えます。

また、心理的瑕疵物件であると告知があったり、ニュースなどで知っていたりする場合は、家賃交渉のハードルが下がります。長期間空室になるよりは、家賃を下げてでも入居してもらいたいと考える大家さんが多いからです。

そして、競争率の低さもメリットのひとつです。部屋探しをする人が集中する1〜3月は、好条件の賃貸物件はすぐに成約してしまいます。しかし心理的瑕疵物件は、たとえ駅チカで築浅の賃貸物件であっても避ける人も多く、残っている場合が多いのです。

心理的瑕疵物件に住む注意点

一方で、心理的瑕疵物件に住む際の注意点は以下の3つがあります。

・実際に住んでみたら気分が悪くなるかもしれない
・治安が悪いかもしれない
・友人などを家に招きづらい 

住む前は大丈夫だと思っても、実際に住んでみたら気分が悪くなってしまったというケースも少なくありません。特に殺人や自殺などによる心理的瑕疵物件の場合、人が亡くなった部屋に住むため、精神面で大きなストレスがかかると予想できます。嫌悪施設が近隣にある心理的瑕疵物件の場合は、指定暴力団の組員や準暴力団の出入りにより、周辺の治安が悪いことが懸念されます。

また、友人や家族などを家に招きにくいというのもデメリットです。自分は気にしていなくても、招かれる側は気にするかもしれません。心理的瑕疵物件であることを伝えずに招き、後になって事実を知ると心証を損なうおそれがあります。

心理的瑕疵物件に住むかどうかは自分の気持ちや捉え方が大事!

心理的瑕疵物件は、「その人がどう思うか」で判断されるため、明確な判断基準がありません。そのため家賃の安さなどを理由に、心理的瑕疵物件でもかまわないと考える人もいます。

しかし、契約するかどうか決める際には十分な注意が必要です。事前に心理的瑕疵物件と告知されて契約をしたにもかかわらず、「やっぱり住みたくない」と思っても契約の取り消しや損害賠償請求はできません。慎重に検討してから、心理的瑕疵物件に住むかどうかを決めましょう。

ふどサーチ編集部