賃貸物件に住もうと考えたとき、安定した収入がないと借りることができないと考える人も多いのではないでしょうか。
しかし、正しい手順で決められた手続きを行えば、収入面に不安がある方でも契約を結ぶことができます。
今回は、生活保護受給者の方が賃貸物件を借りるコツや手順、気をつけるべき点などを紹介していきますので、気になる方はぜひ参考にしてください。
目次
生活保護でもアパートは借りられる!
賃貸物件を借りる場合、不動産会社や保証会社が行う入居審査に通らなければならず、収入面に不安があると判断されれば審査に落ちてしまい、入居ができません。
しかし、一部の賃貸マンション・アパートは収入面に不安がある生活保護受給者でも借りることが可能です。
生活保護受給者向けの賃貸物件は、入居に際して特別なルールが設けられていることも多いので、一般の部屋探しと比べると難易度が高くなるといわれています。また、物件の数に限りがあることにも注意が必要です。
通常時と同じように部屋探しをしても、大家さんや不動産会社に「生活保護を受けている」と伝えたとき、それだけで入居を断られてしまうかもしれません。
しかし、だからといって嘘をついてしまうとその時点で信用されなくなってしまうので、正直に話すことがポイントです。
生活保護は毎月決まった金額が受け取れるものでもあり、安定した収入と捉える大家さんも少なくありません。部屋探しをする際は、生活保護を受けていることを最初に伝えるようにしましょう。
生活保護受給者が入居を断られることが多い理由
生活保護受給者が入居を断られてしまう理由としては、以下の3つのような理由が挙げられます。
・金銭トラブルを懸念するため
・入居者間トラブルを懸念するため
・手続きが増えるため
それぞれの内容について、次項で詳しく見ていきましょう。
金銭トラブルを懸念するため
多くの生活保護受給者は、金銭的に問題を抱えているため国からの援助を受けています。そのため、生活保護受給者と契約すると、金銭トラブルが起こるかもしれないと心配している大家さんも少なくありません。
金銭トラブルとして考えられるのが、家賃の滞納や退去時における修繕費用の未払いです。これらのトラブルは、大家さんにとって大きな赤字に繋がるため、生活保護受給者を敬遠する方もめずらしくありません。
なかには、生活保護受給者との賃貸契約で、実際に金銭トラブルが起こったケースもあります。「生活保護受給者との契約=金銭トラブルに繋がる」と考える大家さんに当たってしまうと、目当ての賃貸物件に住むのはむずかしいとされています。
入居者間トラブルを懸念するため
大家さんによっては、生活保護受給者に対して「自堕落な人」などとあまりよくないイメージを持っている方もいます。
このような場合、騒音やゴミの出し方などさまざまな入居者間トラブルを懸念して、生活保護受給者の入居を断っていることが多いです。
入居者間でトラブルが発生すると、生活保護受給者だけでなく他の入居者が退居してしまう可能性もあります。このように、トラブルから発展して空室が生まれることを懸念し、生活保護受給者の入居を断っているケースもあります。
手続きが増えるため
生活保護受給者の賃貸借契約は、一般的な契約の手続きに比べ、役所とのやり取りが増えます。こうした手間を避けるため、生活保護受給者の入居を受け付けない大家さんも少なくありません。
仮に生活保護受給者も入居できる賃貸物件であっても、手続きの煩雑さから不動産会社が取り扱いをしない場合もあるでしょう。一般的な賃貸借契約の業務で忙しく、手続きが多い生活保護入居可賃貸物件まで手が回らないことも多いのです。
生活保護受給者がアパートを借りるための4つのコツ
不動産会社や大家さんから入居を断られやすい生活保護受給者ですが、以下の4つのコツに沿って部屋探しをすると、希望の賃貸物件が見つかりやすいといわれています。
・住宅扶助制度を利用する
・保証会社や代理納付を利用する
・不動産会社へ来店する前に、物件を紹介してもらえるか問合せる
・生活保護を受けている背景を早めに伝える
難しい内容も含まれているので、1つずつ丁寧に解説していきます。
①住宅扶助制度を利用する
生活保護受給者は、「住宅扶助制度」と呼ばれる家賃補助を受けることができます。住宅扶助とは、居住の維持に必要なお金を支払う制度・または金額のことです。自治体によって住宅扶助の額は異なりますが、東京の23区の場合、単身世帯・床面積15平米超で53,700円の金額を受け取ることが可能です。
※参考:東京都福祉保健局【生活保護「住宅扶助基準額」の見直しについて】
また住宅扶助は、賃貸借契約における以下の対象項目に活用できます。
・家賃
・敷金や礼金
・住居維持費
・仲介手数料
・契約更新料
・火災保険料
・引越し費用
上記にはない共益費や管理費、水道光熱費は住宅扶助の範囲に含まれません。住宅扶助が受けられるかどうかは、自治体のケースワーカーに相談して確認しましょう。
②保証会社や代理納付を利用する
保証会社とは、入居者が家賃を滞納した際に代わりに家賃を払ってくれる会社のことです。
生活保護受給者の家賃未納を心配している大家さんも多いので、保証会社を利用して大家さんの不安をやわらげましょう。
生活保護受給者の家賃確保には、代理納付という制度の利用も効果的です。
代理納付とは、入居者である生活保護受給者には家賃となる住宅扶助の費用を渡さず、地方の福祉事務局が大家さんや不動産会社に直接家賃を振り込んでくれる制度のことです。
悪質な生活保護受給者の場合、住宅扶助をもらっても他のことに使ってしまい、毎月の家賃を支払えなくなるケースもあります。このようなケースがあることが大家さんの不安に繋がっているので、代理納付制度を活用すれば、大家さんや不動産会社からの信頼を得ることが可能です。
③不動産会社へ行く前に、物件を紹介してもらえるか問合せる
生活保護受給者を受け入れている賃貸物件は数が少なく、見つけることに時間と労力を要します。
また、前述にもありましたが、物件数が少なく手続きも煩雑なことから生活保護受給者向けの賃貸物件を取り扱っていない不動産会社もめずらしくありません。不動産会社を訪れても、生活保護受給者向けの物件の取り扱いがなければ徒労に終わってしまいます。
生活保護受給者向けの賃貸物件を探す場合は、生活保護物件の取り扱いがあるのか、前もって不動産会社に問合せておくことがおすすめです。
④生活保護を受けている背景を早めに伝える
生活保護受給者の賃貸借契約は断られやすいからといって、生活保護を受けていることを隠すことはおすすめできません。
生活保護を受給していることは入居審査のときにわかります。その際、事前に生活保護受給者であることを伝えられていなかったとなれば、信用性に欠けると判断されてしまうかもしれません。
生活保護受給者で部屋探しをする場合は、状況と背景をできるだけ早めに伝えておくようにしましょう。また、生活保護の受給が一時的なものである場合は、その旨も事前に伝えておくとよいです。このとき、場合、期間や理由・背景も一緒に説明しておくと親切でしょう。
たとえば、生活保護の理由が病気や怪我の場合、完治に向けて努力しており一時的なものであることを伝えておけば、大家さんの心配も軽くなり、信頼できると判断されるかもしれません。
スムーズに入居審査や契約を進めるためにも、状況や背景はできる限り伝えておくことがおすすめです。
生活保護受給者がアパートを借りる手順
ここからは、賃貸物件を借りる手順について解説していきます。
STEP1:役所で住宅扶助の許可をもらう
STEP2:ケースワーカーと相談のうえ、物件探しをする
STEP3:物件を決めて、入居審査を受ける
STEP4:ケースワーカーからのサポートをもらいながら賃貸借契約を結ぶ
STEP5:引越しをする
実際に借りるまでには時間と手間がかかるため、事前にポイントを押さえておくようにしましょう。
①役所で住宅扶助の許可をもらう
先述した住宅扶助を得るには、最寄りの役所で許可をもらわなければいけません。
住宅扶助の許可は、住んでいる自治体のケースワーカーに相談することで得ることができます。その際に、住宅扶助の上限額を聞いておくと安心です。
急な相談では希望のタイミングで住宅扶助がもらえない可能性もあり、引越しのスケジュールが後ろ倒しになったり入居できる家がなかったりといった事態になってしまいます。そのため、引越しの可能性が出てきたタイミングで、早めにケースワーカーへ相談しましょう。
相談に行く時期の目安としては、引越し希望時期の約3ヶ月前です。また、引越しシーズンの2・3月は自治体も混み合うため、これらの時期を避けつつ前倒しで行動するようにしましょう。
②ケースワーカーと相談のうえ、物件探しをする
住宅扶助の上限が決まれば、家賃の目安額も決まります。
生活保護受給者が賃貸物件を借りる場合は、住宅扶助の上限を超えない部屋を選ぶのがベストです。住宅扶助の額に見合わない家賃の部屋に住んでしまうと、毎月の生活費から家賃を捻出しなければなりません。
希望条件はこだわり過ぎず譲れないものだけ整理し、不動産会社に相談しながら部屋探しを行いましょう。あらかじめ生活保護受給者であることを正直に伝え、家賃目安に合う賃貸物件を紹介してもらいましょう。気になる賃貸物件が見つかったら、内見の段取りを組んでもらってください。
内見に行って「ここに住みたいな」と思ったら、初期費用の見積もりを作成してもらいます。不動産会社によっては、生活保護受給者用の見積もりを作ってもらえるケースもあります。
③物件を決めて、入居審査を受ける
気になる賃貸物件すべての初期費用を確認した後は、実際に住む賃貸物件を決めましょう。
その後、選んだ賃貸物件に問題ないかをケースワーカーに確認してもらってください。家賃は住宅扶助内に収まるか、実際に払えるかをチェックしてもらいます。
ケースワーカーのOKが出たら、契約の申し込みを行い、入居審査に進みましょう。生活保護受給者の場合は審査が厳しくなる傾向があるため、先述した保証会社のほか、代理納付の制度の活用も検討してみてください。
④ケースワーカーからのサポートを受けつつ賃貸借契約を結ぶ
審査に無事通過したら、初期費用をいつ用意してもらえるかケースワーカーに確認しましょう。その日を目安に、不動産会社と賃貸借契約を結びます。
なお、賃貸借契約にはさまざまな書類が必要となるので、ケースワーカーからのサポートを受けつつ、不備のないように賃貸借契約を進めましょう。
⑤引越しをする
賃貸借契約が完了したら、引越しの準備を行います。引越し費用も住宅扶助に含まれるので、引越し業者からの見積もりについても賃貸物件と同じようにケースワーカーへ相談しておきましょう。
また、引越し業者を選ぶ際、複数社に見積もりを取って一番安い引越し業者を選ぶ必要があります。インターネット上には引越し業者の一括見積もりサイトなどもあるため、そういったものを活用しつつ、それぞれを比較しながら決めてみてください。
生活保護受給者がアパートを借りる際に気をつけること
生活保護受給者が賃貸物件を借りる場合、以下の3つに注意を払う必要があります。
・誠実な態度で接する
・スケジュールに余裕を持って進める
・条件を厳しくしすぎない
いずれも大事なポイントなので、事前に頭に入れておくようにしましょう。
誠実な態度で接する
審査に通過し賃貸物件を借りられるかどうかは、不動産会社への印象も大きく影響します。
生活保護受給者に限ったことではありませんが、不動産会社に対しても誠実に対応して、信用を得ることが大切です。また、身だしなみを整えるなど、基本的なマナーを忘れないことも重要です。
スケジュールに余裕をもって進める
生活保護受給者は、一般の入居希望者よりも審査に落ちやすい傾向があります。入居審査に落ちると一から部屋探しをやり直す必要があり、入居までの期間も長引いてしまいます。また、ケースワーカーとのやり取りに時間が取られるかもしれません。
希望のタイミングで引越しができなくなるおそれがあるため、スケジュールには余裕をもって部屋探しを進めましょう。
条件を厳しくしすぎない
生活保護受給者の部屋探しは、条件を厳しくしすぎないことが重要です。どうしても譲れない条件と、妥協できる条件を整理するだけで部屋探しがしやすくなります。
希望条件が増えるほど家賃は上がり、該当する物件数も少なくなります。生活保護受給者向けの賃貸物件は一般的な賃貸物件と比較し、そもそも数が少ないこともあるため注意が必要です。
たとえば一般的な部屋探しの場合、JR山手線沿線の賃貸物件を例に出すと、お部屋の希望条件を1つ増やすだけで、候補に挙がる賃貸物件の数がおよそ5分の1まで少なくなります。(CHINTAIネット参考)
生活保護受給者を受け入れている物件であれば、物件数はさらに大幅に減ってしまうため、いくつかの条件を妥協しながら希望の物件を探してみてください。
生活保護受給者でも賃貸物件を借りられる
生活保護受給者でも賃貸物件は借りられますが、大家さんや不動産会社から入居を断られてしまう可能性が高いです。トラブルなく賃貸物件を借りるためにも、以下のコツを押さえたうえで部屋探しを進めていきましょう。
・住宅扶助制度を利用する
・保証会社や代理納付を利用する
・不動産会社へ行く前に、物件を紹介してもらえるか問合せる
・生活保護を受けている背景を早めに伝える
物件数が限られているうえに審査も厳しいため、引越しの際はスケジュールに余裕をもち、ケースワーカーに相談しながら理想の物件を見つけてみてください。