不動産業界には、大きく分けて4つの業種があります。その中で、物件の賃貸契約や売買に特に関係してくるのは「不動産仲介」会社ですが、実際にどんな仕事をしているのかわからないという方も少なくありませんよね。
今回は、そんな不動産仲介業の仕組みや業務内容、仲介手数料について詳しく解説します。物件探しのときはもちろん、売却・貸出の際にも役立ちますので、興味をお持ちの方はぜひチェックしてみてください。
目次
「不動産仲介業」とは
不動産仲介業とは、貸主と借主、売主と買主の間に立ち、物件や土地・建物の取引をサポートする仕事です。不動産契約には、不動産だけでなく法律・金融・建築などのさまざまな知識が必要です。一般の人は、不動産契約に必要な知識が十分にない場合がほとんどなので、不動産仲介業のサポートが欠かせません。
顧客(借主や買主)・大家さん(貸主や売主)にとっての不動産仲介業のメリットは以下のとおりです。
不動産仲介会社を利用するメリット【顧客側】
顧客にとって不動産仲介業を利用する大きなメリットは、知識量の差をカバーできるという点です。
不動産の借主・買主である顧客側は、大家さんに比べると不動産に関する知識が乏しいケースがほとんどです。不動産の賃貸・売買において十分な知識がないと、物件の状態不備や不適切な売却価格などに気づくことができません。また、法律の知識が十分になく、契約までになにかトラブルが発生してしまう可能性も考えられます。不動産仲介会社のサポートが得られないと、場合によっては大きな損をしてしまうことに繋がるのです。
さらに、不動産契約には多くの書類が必要で、こういった書類作成にも専門知識は欠かせません。多くの知識・経験を持っている不動産仲介業がサポートしてくれるのは、大きな安心感に繋がります。
不動産仲介会社を利用するメリット【大家さん側】
大家さんにとっての不動産仲介を利用するメリットとして、顧客集めが容易になる点が挙げられます。
不動産を貸したいと思っても、顧客がいなくては話が進みません。大家さんは、不動産に関する知識はあっても集客に関してはノウハウがない場合もあり得ます。効果的な集客をするために、不動産仲介会社の手を借りることも少なくありません。
不動産仲介業は、物件の取引を始める前に不動産査定を行うのが一般的です。物件の適切な査定額を知ることで、より効果の高い貸出・売却が叶います。また、不動産仲介を挟むことで物件の広告活動も行えるため、より多くの顧客に見つけてもらうことができるのです。
不動産仲介会社に依頼することで、より顧客の幅が広がるのが、大家さんにとっては大きなメリットとなります。
不動産仲介業と仲介手数料
ここからは、不動産仲介の賃貸・売買それぞれの業務内容と仲介手数料について解説していきます。
不動産仲介業の業務の流れ
不動産仲介業の業務内容は、賃貸と売買でそれぞれ異なります。
■賃貸業務の流れ
①:大家さん(=貸主)が不動産の家賃査定を依頼する
②:大家さんと不動産仲介会社で契約する
③:入居者を募集する
④:入居希望者に不動産情報を提供する
⑤:不動産仲介会社と入居希望者との間で契約を結ぶ
⑥:不動産を引き渡す
大家さんから依頼を受けて契約を結んだ後、不動産仲介会社は自社サイトや不動産ポータルサイトに賃貸物件の情報を掲載します。近年の内見・入居希望の申し込みは、ポータルサイトなどインターネットからがほとんどなため、魅力的な物件写真や詳細情報の掲載が求められます。
また、インターネット経由の問合せに対応するのも賃貸不動産仲介の仕事のひとつですが、その他に店舗へ来店する人の対応もしなければいけません。このように顧客のファーストコンタクトから、内見・重要事項説明・契約書の作成など賃貸契約の成立までにかかる業務を一貫して行っています。
なお、賃貸物件の管理業務を行っている不動産仲介会社も少なくありません。そのような場合は、物件管理や入居者管理、空室対策、クレーム対応などの仕事をこなす必要があります。
次に、売買業務のケースを見ていきましょう。
■売買業務の流れ
①:大家さん(=売主)が物件価格の査定を依頼する
②:大家さんと不動産仲介会社で契約する
③:売却活動を始める
④:希望者と交渉する
⑤:不動産仲介会社と希望者との間で契約を結ぶ
⑥:不動産を引き渡す
物件価格の査定は無料で行っていることが多いため、売主は複数の不動産仲介会社に依頼するのが一般的です。そして査定価格の高さや、その他の条件を比較して契約を結びます。
大きな流れは賃貸の不動産仲介業と同様ですが、賃貸の場合と比べると売却活動のほうがハードルは上がります。買取額が大きい不動産売買の場合、すぐに買主が決まることはほとんどありません。価格交渉や売値の見直しなど、積極的な売却活動を行わなければ買い手がつかないおそれもあります。
不動産仲介と深い関係がある「レインズ」
大事な不動産を売却・貸出する以上、できるだけ査定価格が高額な不動産仲介会社に依頼したいですよね。しかし、不動産会社によって査定額が大きく変わるということはほとんどありません。これは、不動産業界で採用されている「レインズ」というシステムが深く関係しています。
レインズとは「Real Estate Information Network System」の略称で、不動産情報を交換するためのネットワークシステムです。レインズは会員制となっており、宅建業届出済の不動産会社だけがすべての登録情報を確認することができます。登録された不動産であれば過去の取引価格や契約年月日を見ることができ、リアルな取引情報がわかるため、適正価格のチェックにも活用可能です。
すべての不動産がレインズに登録されているわけではありませんが、レインズに登録することで以下のメリットが得られます。
・スピーディーな成約に繋がる
・すべての物件情報を閲覧できる
・不動産が正しく登録されているかを確認できる
レインズに登録すれば、加盟している不動産会社すべてが物件情報を確認できるようになるため、不動産契約が早期に決まる可能性が高くなります。また、売主も自分の物件に限りレインズで閲覧することが可能なので、適切な内容で自分の所有物件が売りに出されているか確認することができます。
また、レインズについて詳細を知りたい人はこちらも参考にしてみてください。
▶不動産会社が活用するレインズとは?仕組みや一般の人が閲覧するメリット・方法を解説
不動産の仲介手数料とは
仲介手数料とは、契約を成立させた成功報酬と手続きの代行費用を合算した費用のことです。不動産仲介業は、顧客・大家の双方から仲介手数料を得ることが可能です。
また、仲介手数料には上限が設定されています。賃貸の場合、基本的に貸主・借主ともに家賃0.5ヶ月分+消費税が上限として定められています。ただし、承諾があれば貸主と借主どちらか一方から、家賃1ヶ月分+消費税を上限として仲介手数料を受けとることも可能です。
一方売買契約の場合、不動産価格によって仲介手数料の上限は下記のように異なります。
不動産価格 | 上限の仲介手数料 |
---|---|
401万円以上 | (不動産価格×3%+6万円)+消費税 |
200〜400万円 | (不動産価格×4%+2万円)+消費税 |
200万円以下 | (不動産価格×5%)+消費税 |
成功報酬の役割がある仲介手数料は、賃貸契約・売買契約が成立してから支払うのが一般的です。特に売買契約の場合は、契約締結時に仲介手数料の半分を、引き渡しが完了した段階で残りの半分を支払うケースも見られます。
「仲介手数料無料」をアピールできる理由
不動産仲介会社によっては、「仲介手数料無料」を謳っているところもありますよね。前述にもありましたが、仲介手数料を無料にできる理由としては、売主・貸主に無料と提示している場合は買主・借主側の一方から、買主・借主に無料と提示している場合は売主・貸主側の一方から仲介手数料を受けとっているケースが多いです。
また、不動産会社が自社で保有している物件の場合は、空室対策として仲介手数料無料の物件としているケースもあります。
仲介手数料が無料の不動産会社に依頼をすると、トータルでの費用を抑えられます。しかし、借主側の注意点として、場合によっては「事務手数料」や「書類作成費用」などの別口で費用が発生していることもあります。請求の項目内容はしっかり確認するようにしましょう。
仲介手数料が無料になる仕組みや注意点については、こちらの記事でより詳しく解説しているので、気になった方はぜひ参考にしてみてください。
▶仲介手数料無料の物件はおすすめできる?無料になる仕組みや注意点を解説
不動産仲介契約の種類
不動産仲介契約には、以下3つの種類があります。
・一般媒介契約
・専任媒介契約
・専属専任媒介契約
それぞれの違いは以下のとおりです。
買主との直接取引 | 依頼できる会社の数 | 依頼主への報告義務 | レインズへの登録義務 | |
---|---|---|---|---|
一般媒介契約 | 可能 | 複数 | なし | なし |
専任媒介契約 | 可能 | 1社 | 2週間に1回 | あり(7日以内に登録) |
専属専任媒介契約 | 不可能 | 1社 | 1週間に1回 | あり(5日以内に登録) |
各契約内容を詳しく見ていきましょう。
一般媒介契約
複数の会社と契約ができ、自分で買主を探すことができる一般媒介契約は、3つの中でもっとも自由度が高い契約方法です。貸主・売主にとっては、条件の良い物件を持っているとすぐに契約が決まるメリットがあります。
しかし、不動産会社からすると他社で売却される可能性もあるため、他の契約方法と比べると積極的に営業活動を行わない傾向が見られます。また、売主・貸主としてもやりとりをする不動産会社が増えるため、手間になる可能性が考えられます。一般媒介契約は、契約期間内にいつでも解除できるため、取引がなかなか決まらない場合は他の契約方法に変更するのもおすすめです。
専任媒介契約
一社としか契約を結ぶことができない専任媒介契約は、不動産会社から手厚く売却活動のサポートを得られることがメリットのひとつです。不動産会社とのやりとりも一社で済むため、対応が楽なのも大きなポイントになります。
ただし万が一、選んだ不動産会社が悪徳であった場合、囲い込みをされる可能性もあるため注意が必要です。囲い込みとは、物件情報を知った他社から問合せが入っても「契約が決まっている」と嘘をつき、自社で問合せがはいるまで物件を抱え込むことをいいます。そうなると、好条件で不動産を貸したり売却したりできる可能性が低くなるため、不動産会社選びは慎重に行う必要があると言えます。
悪徳な不動産会社の見分け方や対処法については「やばい不動産会社に仲介依頼しないために!注意すべき8つの手口と対策」の記事でも紹介しているので、気になった方はぜひご覧になってみてください。
専属専任媒介契約
専任媒介契約と同じく一社のみと契約を結ぶことができる専属専任媒介契約は、自分で買主を見つけることができません。3つの中でもっとも制限のある契約方法ですが、その分さらに不動産会社からのサポートが手厚くなることが大きな特徴です。
所有している物件の状態が少々悪い場合でも、専属専任媒介契約を結べば早く契約できる可能性が高まります。また、契約日から5日以内にレインズに登録する義務があるため、スピーディーな取引が期待できるのもメリットのひとつです。
賃貸物件のタイプと違い
不動産仲介会社が顧客へ紹介する賃貸物件には、以下の4つのタイプがあります。
・自社物件
・管理物件
・他社物件
・オーナー物件
それぞれの特徴と違いを見ていきましょう。
自社物件
自社物件とは、不動産会社が自社で所有する物件のことです。自社物件は毎月の家賃が丸々収益に繋がるため、自社物件をもつ不動産の場合、顧客へおすすめする可能性が高まります。
自社物件は顧客側にも大きなメリットがあります。そのひとつは、空室対策として仲介手数料を無料としている物件のケースが多くあることです。また、仲介手数料面のメリットの他、敷金・礼金などの交渉がしやすく、費用が安くなる場合もあります。そのため引越しの初期費用を抑えたい場合、自社物件を選ぶこともひとつの手になります。
自社物件の場合、不動産会社と直接やりとりをすることになるため、条件の交渉がしやすく入居後の対応もスムーズといった面が大きなメリットです。初期費用の節約のためにも、条件が同じ物件が複数あれば、そのなかに自社物件はないか見てみることもおすすめです。
管理物件
管理物件は、不動産会社が大家さんから管理を任されている物件のことです。入居者の募集はもちろん、入居後の物件管理や入居者対応まで不動産会社が行います。
不動産会社に物件を管理してもらうために、大家さんは家賃の数%ほどの費用を不動産会社に支払う必要があります。不動産会社からすると、空室の契約が決まれば収入につながるため、おすすめされる物件に管理物件が多い場合もあります。
管理物件の場合、大家さんがどんな方か事前に不動産会社に確認してみると、より安心して契約ができるかもしれません。
他社物件
他社物件とは、他の不動産会社が所有・管理している物件のことです。
他社物件が契約された場合、仲介手数料は所有・管理している不動産会社と折半することになるのが一般的です。契約を決めた不動産会社の利益が低くなってしまうため、他社物件を紹介する優先度は自社物件や管理物件より低い可能性もあります。とはいえ悪徳な不動産仲介会社でない限り、他社物件だからと紹介しないことはないため、おすすめされた物件の中に気にいったものがない場合は、ほかにも物件がないか確認してみましょう。
不動産会社は横の繋がりが強いため、入居者が決まりづらい賃貸物件の場合、別の不動産会社に紹介してもらうことも少なくありません。他社物件と自社物件・管理物件は見分けづらいため、気になったときは不動産会社に聞いてみるのもおすすめです。
オーナー物件
オーナー物件とは、どこの不動産会社も所有・管理していない賃貸物件のことを指します。管理は大家さんが直接行い、入居者募集だけを不動産会社に委託しているケースが一般的です。
不動産会社からすると、オーナー物件は他のタイプの物件に比べて仲介手数料の収益性が高いため、自社物件・管理物件と併せておすすめされやすい種類の賃貸物件だと言えます。
またオーナー物件の大きな特徴は、物件管理や入居者対応が不動産会社ではないことです。そのため、大家さんによっては希望通りの待遇を受けられない可能性もあるので注意しましょう。オーナー物件についても、大家さんがどんな人なのか、事前に不動産会社へ確認しておくとよいかもしれません。
不動産仲介の仕組みを理解し、賢く物件を探そう!
不動産仲介業は、賃貸物件の取引の際に入居希望者・大家さんをサポートする役割を担っています。大家さんからしても効果的な集客が望めるため、利用するメリットは大きいと言えます。また、手数料を無料にしている不動産仲介会社も多いので、大事な契約の際には今回ご紹介した不動産仲介の仕組みやメリット、注意点を思い出しながら理想の物件を探してみてください。